09 卓上RPGデザイン論の記事リスト

今回は、「ドラマ作成ポイント」を採用したルールシステムのデザイン例を示します。前回示したものとは異なる「予断の内容の不一致」対策も組み込んでおります。ここではプレイヤー用ルールのみ、名前はまだ無い。

誰が誰に首ナイフするのか」で述べた「ルールと予断との不一致」は、「ドラマ作成ポイント」を採用したルールシステムでは生じません。しかしながら、そこでは別の「不一致」が生じ、より重篤な問題を起こす恐れがあります。以下、起こりうる問題とそれへの対策について述べます。「首ナイフ」というよりはルールデザイン論。

前回(1)に引き続き、『Basic RolePlaying』(BRP)の三つの「中世ヨーロッパ」世界設定を比較します。今回は特に、「その世界にお奨めのオプションルール」(Suggested Optional Rules)について。

  1. 暗黒時代(Dark Ages)。荒廃した中世ヨーロッパで騎士やバイキングが闘う、剣と斧の時代。
  2. 騎士道物(High Medieval)。中世ヨーロッパの封建社会で騎士道に生きる、剣と十字架の時代。
  3. 幻想世界(High Fantasy)。様々な種族が善と悪との勢力に分かれて闘う、魔剣と魔法の世界。

Basic RolePlaying』(BRP)ルールブックに収められた23の「世界設定」(World Setting)の内、「中世ヨーロッパ」的な三設定を比較します。

  1. 暗黒時代(Dark Ages;以下DA)。荒廃した中世ヨーロッパで騎士やバイキングが闘う、剣と斧の時代。
  2. 騎士道物(High Medieval;以下HM)。中世ヨーロッパの封建社会で騎士道に生きる、剣と十字架の時代。
  3. 幻想世界(High Fantasy;以下HF)。様々な種族が善と悪との勢力に分かれて闘う、魔剣と魔法の世界。

卓上RPG(Table-top RPG;TRPG)の「世界設定」(World Setting)は、ルールシステムと同じように「世界観」(World View)に基づいて構築され、ルールシステムと共にゲームプレイの両輪となります。Chaosium社のゲームシステム『Basic RolePlaying』(BRP)のルールブックには23の代表的「世界設定」が示されており、それに手を加えることで個別の「世界設定」を作成することができます。

以下、BRPの23の「世界設定」を、時代順に列記します。世界設定名の私訳は、必ずしも直訳ではありません。

先の論考「『クトゥルフ神話TRPG』非模範的相談室」の捕捉を兼ねて、また「遊び方」(遊戯法)の部分的実例として、判定ルールに合わせてシナリオを作ることについての考察をまとめます。

卓上RPGのルールシステムの内、キャラクターが試みた(一回の)行動が「上手くいったか否か」を決める手順を、ここでは「判定ルール」と呼びます。サイコロを用いるもの、カードを用いるものなど、判定ルールは多種多様ですが、その性格から次の三つに分類できます。

  • 成功か失敗かに分ける判定ルール
  • 成功の度合いを決める判定ルール
  • 得意なら必ず成功する判定ルール

論考「『北斗の拳』に見る三種類のドラマ」で挙げた、「ワールドセッティングの上のドラマ」「キャラクターの間のドラマ」「シチュエーションの中のドラマ」の三者は、卓上RPGのゲームプレイにおいても語ることができます。もちろん卓上RPGは、小説やマンガ、映画などとは異質な構造を持ちますから、そこに生じる「ドラマ」もまた別物です。

ドラマ」とは、演劇をはじめとして、劇的な展開を生み出すあらゆるものを指す語です。小説やマンガはもちろんのこと、スポーツや現実の事件などにも用いられます。卓上RPGのゲームプレイも、その結果が劇的であれば、「ドラマ」の一種となりえます。

この論考では、「ドラマ」を構成する三つの要素「ワールドセッティング」「キャラクター」「シチュエーション」について考察します。これら三者は常に共存するものですが、三者のどれが優勢となるかによって「ドラマ」の性格が変わります。

先の論考「失敗か事故か、成り行きか」で触れた、「想定外を想定する」ということについて、具体例を幾つか挙げます。難しいことではありませんし、誰もがしばしば行っていることですが。

何であれ行為をすれば、好ましい結果が得られることがあれば、好ましくない結果に至ることもあります。仕事や受験、交渉であれスポーツであれ、あるいは原子力発電所の運用、更には卓上RPGのゲームプレイにおいても。

このような結果の違いをどのように評価するか、には三通りの方法が考えられます。

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