EVERWAYへの誤解を解く (1998年執筆)

本論考は、1998年11月20日に発表されたものです。文中の趣旨が、現在の筆者の考察とは異なる場合もありますので、ご注意願います。

電撃アドベンチャー誌No.14所収 "はろーdeもなむー" 「第1回エヴァーウェイ 果てしなき挑戦」(舘野恒夫・著)について

はじめに

以下は、EVERWAYを紹介した記事の誤りを指摘するものです。実は私は、この記事の存在をつい最近まで知りませんでした。同ゲームのルールブックは所有していましたが、記事が掲載された雑誌「電撃アドヴェンチャーズ」を、その数号前の版型刷新を機に、購入をやめていたのです。ある掲示板で話題に挙がった際、私が知っているルールと異なるのに気付いたのが始まりでした。

まず、掲示板できっかけを与えて下さったマコさん、そのお兄さんのM.K.さん、そして私がバックナンバーを探し出せなかったのを見かねて、記事のコピーを大変な苦労をかけて送ってくださったさんの御三方に、心より御礼申しあげます。今回の事が無かったら?このレビューを書けなかっただけではありません。私が確認の為にEVERWAYを読み返すことも無く、いまだに「斬新だが難しいRPG」という感想を持つに留まっていたことでしょう。私がEVERWAYの本当の素晴らしさに気付くことができたのは、購入当時からの経験と、その機会を与えてくれた方々のお陰です。本当に、ありがとう。

指摘の前に

問題の記事「はろーdeもなむー」は、メディアワークス社「電撃アドベンチャー」誌14号(1996年2月)から七回に亘って連載された記事である。「まだ翻訳版の発売されていない、海外のRPGをプレイし、面白ければ神のごとく誉め称え、つまらなければ容赦なく一刀両断するという、タイトルから想像できない、超ハード企画」(p.88下)で、人気もあったと伝え聞いている。「いろいろなゲームの情報(特に内容)を実際に遊んで、その経過を紹介してみ」(同上)ることで、「お小遣いをムダにしなくてす」ませることが目的であるらしい。

このゲームの内容は事実ではあるが絶対ではない」(同上)そうだが、今回は事実でなかった部分を指摘していく。「自分たちはもっと面白くこのゲームを遊べるんだぁーーっ!という人がいれば、プレイレポートを送ってきてくれたまえ。面白ければ掲載するぞ」(同上)ともあり、本来ならば出版社に直接意見すべきところであるが、同誌は既に廃刊(休刊だったかもしれない)しているため、考えた末、このような形で発表することとした。

また、元の記事を併せて掲載する許可を得ようとも考えたが、どこに求めて良いか不明な点もあったため、最低限の引用のみにて記事を作成することとした。可能であれば、同誌を用意された上で読まれることをお勧めする。同誌をお持ちでない方には分かりづらい点が多かろうが、ご容赦願いたい。

文章部分の問題点

舘野恒夫による文章部分は、p.88~93に上下二段に分かれて書かれている。その間に、金澤尚子によるレポート漫画があるのだが、それについては後述する。概要説明、キャラクター作成、判定方法について書いた後、評価を出している。ルールブックと読み比べた結果、正しい部分と間違っている部分があることが分かったが、主な問題点は次の通りである。

  1. キャラクター作成ルールを間違えている。
  2. ルールブックに書いてない判定ルールを紹介している。
  3. 1と2を根拠に評価を付けている。

記事の内容を吟味しつつ、上記三点について以下に述べる。

1、キャラクター作成ルールにおける誤り

キャラクター作成ルールを簡単に説明しているが、幾つかの誤りがある。

5つの能力値と特殊能力に割り振る数値が20点以内ということだけ
(中略)
特殊能力は、その強力さと使用頻度に応じて0~3ポイントを消費する。(共にp.90下)

4つの能力値"Fire"、"Earth"、"Air"、"Water"と、特殊能力"Powers"、魔法"Magic"に20点を割り振る、が正しい。また特殊能力には4ポイントのものもあり、ルールブックに例示されている。

その特殊能力の例が記してあるので、ルールブックと照らし合わせてみよう。

「即死しない限り、どんな傷でも一瞬で治る」(同上)

2ポイントの"Instant Healing"のこと。正しい。

「物理的な手段で殺すことができない」(同上)

2ポイントの"Unkilled"であろうか?だとすれば、"死なない"だけで、傷付き、衰弱し、気絶もする。もっと強い3ポイントの"Invulnerable"だとしても飢え渇きでは死ぬので、念のため。

「非魔法的な手段で殺すことができない」(同上)

ルールブックには見つからなかった。前出"Invulnerable"の間違いかもしれない。

「人狼に変身する(変身中は銀か魔法の武器でしか傷つかない)」(同上)

2ポイントの"Werewolf"。正しい。

「睨んだだけで相手を魅了する」(同上)

3ポイントの"Dominating Gaze"ならば、"睨んだだけ"では駄目で、視線を合わせながら会話することが必要となる。それより強い"Instant Control"は、"許可してはいけない特殊能力"として記載されている。なお、相手の精神に働きかける能力は、そのプレイヤーが他のPCに使わないという約束をしないと、取ってはいけないことになっている。

金澤尚子を始め、4人のプレイヤーにより作成されたキャラクターが紹介されているが、その能力に少々疑問がある。

鳥頭のぴよぷー
人を乗せることができる、巨大な孔雀に変身する。変身中は魔法か銀の武器でしか傷つかない。(同上)

そもそも真面目にやる気が無いとしか思えない...これは決して個人的な嗜好の問題ではないと思うのだが。特殊能力は、3ポイントの"Werehawk"の類似に、「人を乗せる」ほどの力を加えたもので、4ポイントのものと推測される。使い方(後述)さえ除けば、ルール上の問題は無い。

スピア・ハッピーのラッシュ
どんな傷でも一瞬で治る。物理的な手段で殺すことができない。(p.91下)

"Instant Healing"(2ポイント)と"Unkillable"(2ポイント)であろうか。合計4ポイント。(特殊能力は合計6ポイントまで許される。)

ウツロ
肉体を持たない霊的存在。空を飛ぶ。邪視で生命力を奪い、他人に与えることができる(同上)

このキャラクターはまったく理解できない。独自の能力云々の問題ではなく、明らかにルールに反しているのである。

ルールブックのキャラクター作成(EVERWAY Playing Guide p.67)中には、"人間でなくても良いが、どのような世界に行ってもコミュニケーションを取れるように、外見的に人間に近い種族でなくてはならない"(意訳)との指示がある。"肉体を持たない霊的存在"が許可されるとは思えない。

鳥に変身するでもないのに空を飛ぶ能力の例示はないが、3ポイントと考えれなくもない。「邪視で生命力を奪い、他人に与える」のも、(許可されるべきかどうかはともかく)4ポイントで可能かもしれないが、先のものに加えて計7ポイント。特殊能力の合計値は6ポイントまでとすべき、との記述がルールブックにある。

少なくとも私は、海外未訳RPGの紹介記事に、ここまで正式ルールを逸脱したキャラクターを出すのは反対である。ましてや、その旨の説明も無いのだ。

ジョーカー・ザ・プレートフェイス
風の魔術師。特殊能力はなし。
あんた『人類最強の、伝説的な魔法使い』でしょうが!!(同上)

ルール面ではまったく問題無い。ただし、レベル7の"Legendary Mage"は作成時のPCとしては最強であるが、「人類最強」では無い。(一般人の最強が6、"Spherewalker"の最強は9。)余談であるが、レベル7の魔法使いは、運動能力や耐久力、感性等は、すべて「2(一般人の半分以下)」となる。

念のために言っておくが、ほとんどの能力は、ルールブックにサンプルとして載っているものを使っただけである。(同上)

念のために言っておくが、上記10の能力(重複は除く)の内、「ルールブックにサンプルとして載っているもの」は、多くみても4つである。魔法を含めたとしても、11中5つ。その内ひとつが禁止されている能力かもしれないのは置いとくとして、それをして「ほとんど」と言って良いもであろうか。(例:今日のテストはほとんど正解だった!>40点)

2、判定ルールにおける誤り

エヴァーウェイは"ダイスレスRPG"というシステムを採用している。(p.92上)

細かいことだが、このような名称は使われていない。そもそも"ダイスレス"とは、ランダム要素皆無のルールのことを指すのであって、判定にカードを引くEverwayはその範疇に入らない。

この言葉に続いて語られる「スゴイ判定ルール」「スゴイゲームシステム」は、もっとも私を困惑させた部分である。何せ、"間違った説明がある"どころの話ではなく、"正しい説明が無い"のだから。

能力値には、数値に応じて「平均的な体力」とか「伝説の超人に匹敵する」といった目安がついていて、マスターはそれを判断基準にキャラクターの行動結果を決める。(同上)

まったくの正解ではないが、これが唯一ルールブックと同じようなことが書いてあった部分である。詳しくは後述するが、ごく簡単な行為(小さな物音が聞こえたかどうか、など)は、能力値が幾つか、だけで判断(Waterが4以上の人は聞こえた)しても良い。

しかしそれでは、戦闘のような対抗判定では、一瞬で勝負がついてしまって面白くない。(同上)

あらかじめ言っておくが、戦闘のように重要な局面までそのように解決しろ、とはどこにも書いてない。

そこで、有利または不利な条件が1つあるごとに、能力値にボーナスやペナルティをつけていくというルールがついている。(同上)

ついていない。

互いに自分に有利な、あるいは敵に不利な判断材料や戦術が尽きるまで、舌戦を繰り広げる。(同上)

繰り広げない。

それが出切ったとき、ボーナスやペナルティと能力値の高い方が戦闘に勝利するというわけ。(同上)

しつこいようだが、このようなルールは無い。

例えばこんなこともあった。GM「肉体を用いた戦闘技術を司る能力値は"火"。能力値5のラッシュと4の赤騎士の戦いです(中略)
結局、勝負がつくまでに、60分の時間と4.5リットルの飲み物が消費された。(同上)

されないって。

以下に正しい判定ルールを紹介する。

EVERWAYの判定ルールは、能力値に基づく"The Law of Karma"、ストーリー展開上の必然性に基づく"The Law of Drama"、ランダムに引いた36枚のカード(Fortune Deck;フォーチューン・デッキ)の意味に基づく"The Law of Fortune"の三段階からなる。状況に応じてその内のひとつか、複数の組合せを用いるよう指示されており、特に重要な戦闘では三つとも用いるのが通例である。

1、The Law of Karma

PCをFire5、Earth3。敵をFire4、Earth7と仮定しよう。攻撃・動き(Fire)ではPCに利があるが、防御力や体力(Earth)で敵があまりに強すぎる。特にPCの攻撃力(5)よりも敵の防御力(7)、PCの防御力(3)よりも敵の攻撃力(4)が高い。普通に戦ったら、PCの打撃が多く当たるがすべて防御され、徐々に体力を奪われていく・・・という展開が予想される。(NPC同士ならこれと"Drama"だけで解決しても良い。)

2、The Law of Drama

敵の人柄や立場や目的、戦闘に至るまでの展開、そのシナリオのプロット上の意味付けなどから、ありえる展開を考える。戦闘は避けられないか?どちらかが死ぬまで続くのか?闖入者登場の可能性は?などなど。

3、The Law of Fortune

フォーチューン・デッキを(プレイヤーには見せずに)一枚引く。良い意味であればPC側に有利に、悪い意味であれば不利な結果となる。更にカードの意味から、アドリブで描写を加えることが薦められている。

例えば「Inspiration」(炎と蛇を手に持つ女神。背後には太陽、足元の水辺には白鳥)を正位置で引いたとしよう。ルールブックp.132によると、「創造的・積極的な者がそうでない者に勝利する。Fireと結びつく」とある。良い意味である上、Fireで上位にあるPCにとって有利な意味を持つ。

私ならば、こう読み解く。

「君(PC)の最初の数撃は敵の鎧に弾かれていたが、激しい剣戟にバランスを崩したところで、鎧の隙間を貫いた。確かな手応えがあったよ」と。

その傷は致命的なものか?戦闘力が低下する程度にしておくか?敵は死をも覚悟して掴みかかってくるか?降伏するか?気絶するか?...などの決定には、"The Law of Drama"の判断が影響を与えるであろう。

尚、戦闘時に何回判定するか、には三通りの方法が示唆されている。相手が雑魚か、強大な最後の敵かで、使い分けることになる。

先の記事の説明では、フォーチューン・デッキの使用が組込まれていない。おかしいな?と思っていたら、次のような一文が現れた。

ダイスレスRPGでは、判定の最終局面や有利不利の判断がつきにくいという欠点がある。
エヴァーウェイのデザイナーもこの欠点をある程度はわかっていたらしい。
マスターの判断を助けるために、偶然の要素を取り入れている。それが"フォーテュン・デッキ"だ。(p.92下)

先に述べた通り、この記事の著者が紹介している判定ルールは、エヴァーウェイのものとは異なっている。おそらく、著者が作成したハウスルールであろう。本来のルールには、ここで述べられているような欠点は無い。

実際に使ってみると、どうにも解釈しようのないカードを引いて悩むことが多い。
例えば、敵にとどめを刺そうとしたとき、"INSPIRATION(創造力)"のカードを引いてしまったとしよう。
きみは、敵の戦士がどうなったか、すぐに想像できる?(同上)

私が挙げた判定ルールのところを参照されたい。ルールブックに、カードリーディングの手がかりが示唆されており、例示もある。(加えて、「とどめを刺す」のに判定が必要か?ということにも再考の余地がある。)

いたずらにマスタリングの難易度を上げているだけのような気がする。
もっと実例を挙げて丁寧に解説してあれば良かったのに。(同上)

解説している。...難易度が決して低くないのは、私も否定しないが。

ひとつ補足しておく。付属の90枚のVision Cardや別売のカードは、キャラクター作成時以外にも、シナリオ中の情景描写などで使うことができる。記事中にあるように、それらが「無用の長物となる」(p.91上)ことはない。念のため。

3、評価について

以上のようなレビューを根拠に、このRPGの評価が行われる。

プレイして痛感したことがある。
汎用ファンタジーは、エヴァーウェイのシステムに一番向いていない背景世界だ。(p.92下)

ここでいう"汎用ファンタジー"の意味が良くわからない。私は、エヴァーウェイの舞台世界(多くの次元~すべて特異なファンタジー世界~が連結している)はかなり独特であるように思うのだが。

オマケのカードが欲しいなら、買ってみるのも悪くない。
しかし、オマケがついているからといってキャラメルが美味くなるわけじゃない。
第一、キャラメルが食べたいなら、もっと安くて美味い銘柄はたくさんある。(p.93下)

恥ずかしながら、この文章は、まったく意味がわからなかった。

最後に、「恨み度評価表」が掲載されている。「星5つが最悪」だそうである。その星の数を数字にして写すと、下記の通りである。

ルールの難しさ:1
プレイの難しさ:5
新鮮味の無さ:3
貧乏臭さ:1
二度とやるもんか度:4
金返せ度:5
総合恨み度(舘野):4
総合恨み度(金澤):5

項目名から察するに、きわめて感情的・嗜好的な評価を試みたようである。であるから、評価内容についてはコメントを避けよう。あくまでも、"彼らが行ったプレイ"の正直な評価なのだろうから。

ただ、次の漫画部分でも明らかになるのだが、彼らが行ったプレイはエヴァーウェイの正式なプレイからは大きくかけ離れている。それを根拠にした評価である故、"エヴァーウェイの評価"としては信頼性が皆無であることは言うまでも無い。

漫画部分の問題点

金澤尚子による漫画部分は、p.89~93の各頁の中央に描かれている。エヴァーウェイをプレイするに至った経緯、概要説明、キャラクター作成、判定、シナリオの展開がギャグマンガとして描かれ、最後に"落ち"らしきものも出している。主な問題点は次の通りである。

  1. ルールが間違っている。
  2. シナリオが間違っている。
  3. "落ち"に問題がある。

上記三点について、簡潔に述べる。...多分、金澤尚子は真実(ルールブックに本当に書いてあった内容)を知らなかっただけであろうから。

1、ルールについて

文章部分で述べたことの繰り返しになるので、省略する。

2、シナリオについて

ルールブックに付属のシナリオ"Journey to Stonedeep"をプレイしたことは明らかである。が、問題は紹介されているクライマックスの内容である。

ってオイ!
プレーヤー関係ないシナリオやんけっっ(p.93)

(ネタをばらしてしまうので多くは語らないが)プレイヤー金澤尚子のこのセリフは、NPCがある行動を勝手にとって、話を終わらせてしまった時のものである。PCはその場にいたのだが、NPCだけで話を進め、めでたしめでたし。これではプレイヤーが怒るのも当然であるが、それに対するマスター舘野恒夫のセリフは、こうである。

...おかしいな...
M:TG作った会社なんだからもっと面白くなってもおかしくないハズ...(同上)

※補足:当時エヴァーウェイは、M:TGことMagic the Gatheringの出版元であるWizards of the Coast社から出版されていた。Magic大当たりの後、RPG部門廃止を決めたWizards of the Coast社から売りに出され、現在Rubicon Games社から発売されている。ちなみに、Wizards of the Coast社はほとぼりが冷めた頃、TSR社ともうひとつのRPG出版社を傘下に入れることとなる。

結論から言うと、このマスターはシナリオを間違って使っている。

同シナリオのクライマックス部分には、六通りの展開の可能性が示されている。PCがどのような行動を取ると、どの展開になり、その後何が起こるかまで、丁寧に書かれている。実に良いシナリオなのだ。

しかし、このマスターは、プレイヤーが積極的に「ある行動」を取った場合にのみ起こる"最善の展開"を、PCが何かする前にNPCだけで進めてしまったのである...漫画通りなら。なぜそうしたのか?紙面に明確に示されている部分であるから、見逃すとは思えないのだが...?

考えうることは、マスターがシナリオをすべて読んでいないか、意図的に内容を変えたのであろう。

3、"落ち"について

先の引用(...おかしいな...以下)の後、次のセリフがこの記事の締めとなっている。

(マジック・ザ・ギャザリングの)メインスタッフ
誰1人としておらず!!(効果音「ガーン」)(p.93)

それがどうだというのだろうか。カードゲームのデザイナーであれば、優れたRPGが作れたとでも?いや、そもそも"落ち"になっていないのだ。

ご存知の方もいらっしゃると思うが...エヴァーウェイのデザイナー"Jonathan Tweet"の名を知らない方でも、Ars Magicaの二人のデザイナーの一人である、と言えばお分かりであろうか。ちなみに相棒は、Whitewolf社のVampire: the Masquerade等のデザイナー"Mark Rein・Hagen"である。アメリカのRPG界の首位はお馴染みAD&Dであるが、Ars MagicaにせよVampireにせよ、それに準ずる地位を築いている優秀なRPG大作である。海外RPGに手を出さない方は知らずとも仕方ないが、プロが知らないはずはないような大物デザイナーである(と私は考えている、の、だが)。

...それを知っても、笑えますか?この"落ち"。

いずれにせよ、そのような大物デザイナーを紹介せず、どうしてカードゲームの話に持っていくのか?私には理解できない。

この紹介記事を評価する

以上、この記事の内容について述べてきた。最後に、「この著者本人がルールを読み、マスターを担当した」という前提で、この記事に関する私の評価を申しあげる。(←要するに、まったくのでっち上げで無かったとして、という意味。)

記事全体が、まったくの虚偽で占められている。ルールブックを正しく読んでおらず、また最低限のルールすら理解していない。海外未訳RPGを知るための参考資料として不適当なばかりか、優秀な作品を粗悪なものとして不当に紹介していることは国内RPG愛好家にとって有害ですらある。

プロとしての自覚・責任または能力が不足ないし欠如しているか、さもなくば意図的にそうせざるを得なかったとしか思えない。(さすがに後者は、下司の勘繰りの感もあるが。)

プレイヤーは一見犠牲者であるが、そうとばかりもいえない。金澤尚子のキャラクター「鳥頭のぴよぷー」や、彼らがとった行動("死なない"仲間を上空から敵の上に落として、敵を倒す、など)は、ファンタジーではなく、ギャグをやりたかっただけとしか思えない。記事として紙面に載った時点で、個人の域を越えているのだから、嗜好云々は理由にならない。...それとも、日本における"ファンタジー"はギャグのことなのだろうか?これは日本のRPG最大最悪の問題点かもしれない。

また、記事中総じて感じたのは、彼らが「カードを使うRPG」というだけで、すでに"Magic the Gathering"を念頭に置いていたらしきことである。彼らは"Magic"に近ければ優れたRPGになるとでも思っていたのだろうか?その是非は別にしても、それを理由にそれ以外の可能性を否定したのならば、彼らはプロを名乗るにはあまりに力不足である。

エヴァーウェイは、物語性や想像性の高いゲームである。本当のファンタジーを好む者が、新しいRPGの境地に至るためのゲームである。あまりに挑戦的かつ斬新であるが故、弱点もある。能力値の比較、フォーチュンデッキの意味の読み方、プレイ像が掴みにくい、好き嫌いが分かれる、などである。しかしそれは決してこのゲームの魅力を損ねるものではない。

かく言う私も、自分の好みと違いがあったため数年間蔵したままとなっていた。今回のこの記事、そしてその影響に震えた時、同ゲームを再び読み返す機会に恵まれた。幸い、この数年の時間は、私にこのゲームの本質を知るだけの経験を与えてくれていた。これを機に、私は今後このゲームの紹介を進めていきたいと考えている。海外に数作ある、持ち込まれたら日本のRPGシーンを変えてしまうような傑作...エヴァーウェイはその中のひとつである。

問題の多い記事ではあったが、私に新しい行動に向かう力を与えてくれた。そのことには、正直に感謝している。