CoC, 自動車運転ルール (1997年執筆)

本論考は、1997年11月頃に発表されたものです。文中の趣旨が、現在の筆者の考察とは異なる場合もありますので、ご注意願います。

自動車やバイクの運転による競争と戦闘

はじめに

以下に示すルールは、自動車等の運転に関する「クトゥルフの呼び声」RPG用の自作の追加ルールです。

尚、ケイオシアム社の公式自動車運転ルールは、「CTHULHU KEEPER'S KIT [#5110, $14.95]」に掲載されております。

「クトゥルフの呼び声」ルールブック上では自動車運転に関するルールはあくまで技能の一つに過ぎず、その処理に関して特別な追加説明はありません。一方、上記サプリメントに所収の公式ルールは車間距離を基本としたものであり、おそらく車間における射撃等を想定したものと思われます。しかしこのルールでは、銃器の所有・使用に大きな制限のある現代日本等を舞台にする際には物足りなさを感じさせます。またアクセサリの一部であったためデータ量に乏しいという弱点がありました。

そのため、この自作ルールではそれとは異なった考えに基づいて自動車の運転、ならびにそれを用いた戦闘などの処理を考案してみました。

用語の説明

以下のルールで用いられる用語は原則的に「クトゥルフの呼び声」ルールブックに則りますが、それ以外に次のような用語を使用しております。

  • 基本STR(Strength) : その車体を動かすのに必要なエンジンの出力を表します。出力STRの最低値となります。
  • 出力STR : 運転中に実際にその車のエンジンが出している力を表します。運転者が任意に決定します。
  • 加速STR : 出力STRが基本STRを上回っている値です。その車のスピードを表します。
  • CON(Constitution) : 車体の頑丈さを表します。
  • SIZ(Size) : 車体の重量を表します。
  • HP(Hit Point) : 車体がどれだけのダメージに耐えられるかを示します。
  • AP(Armor Point) : 車体の装甲がどれだけのダメージを防げるかを示します。
  • 乗員定数 : その車が、何人の人間が乗ることを想定して造られているかを示します。無理をすればもっと乗ることもできるでしょう。

能力値の設定

まず、自動車の能力値を設定します。

  • SIZ : その車体の重量からSIZを求めます。目安は表1にまとめましたが、実際のカタログ等を参考にしても良いでしょう。
  • CON : SIZを乗員定数で割ったもの(端数切上)がその車体のCONとなります。(CON=SIZ/乗員定数)
  • 基本STR : SIZの半分(端数切上)です。(基本STR=SIZ/2)
  • HP : CONとSIZの平均値(端数切上)です。(HP=(CON+SIZ)/2)
  • AP : CONの平方根(端数切上)です。(AP=CONのルート)

表1(車種別能力値一覧)

  • リムジン (乗員定数4, 基本STR25, CON13, SIZ50, HP32, AP4)
  • 4ドア・セダン (乗員定数5, 基本STR23, CON9, SIZ45, HP27, AP3)
  • 2ドア・セダン (乗員定数5, 基本STR20, CON8, SIZ40, HP24, AP3)
  • 2ドア・スポーツカー (乗員定数2, 基本STR20, CON20, SIZ40, HP30, AP5)
  • ミニバン (乗員定数4, 基本STR18, CON9, SIZ35, HP22, AP3)
  • ステーションワゴン (乗員定数8, 基本STR23, CON6, SIZ45, HP26, AP3)
  • ワゴン (乗員定数8, 基本STR25, CON7, SIZ50, HP29, AP3)
  • ランドクルーザー (乗員定数5, 基本STR25, CON10, SIZ50, HP30, AP4)
  • ジープ (乗員定数2, 基本STR23, CON23, SIZ45, HP34, AP5)
  • ライトバン (乗員定数5, 基本STR23, CON9, SIZ45, HP27, AP3)
  • 軽トラック (乗員定数2, 基本STR20, CON20, SIZ40, HP30, AP5)
  • 小型トラック (乗員定数2, 基本STR25, CON25, SIZ50, HP38, AP5)
  • 中型トラック (乗員定数2, 基本STR30, CON30, SIZ60, HP45, AP6)
  • 大型トラック (乗員定数2, 基本STR35, CON35, SIZ70, HP53, AP6)
  • タンクローリー (乗員定数2, 基本STR35, CON35, SIZ70, HP53, AP6)
  • クレーントラクタ (乗員定数2, 基本STR40, CON40, SIZ80, HP60, AP7)
  • 路線バス (乗員定数30, 基本STR30, CON2, SIZ60, HP31, AP2)
  • 観光バス (乗員定数45, 基本STR35, CON2, SIZ70, HP36, AP2)
  • 小型バイク (乗員定数1, 基本STR5, CON10, SIZ10, HP10, AP3)
  • 中型バイク (乗員定数1, 基本STR8, CON15, SIZ15, HP15, AP4)
  • 大型バイク (乗員定数1, 基本STR10, CON20, SIZ20, HP20, AP5)
  • 小型スクーター (乗員定数1, 基本STR5, CON10, SIZ10, HP10, AP3)
  • 大型スクーター (乗員定数1, 基本STR8, CON15, SIZ15, HP15, AP4)

判定

運転中に運転者や同乗者が行う行為判定について説明します。

(運転)

運転判定にはその車のハンドルを握っているキャラクターの「自動車運転(Drive Auto)」技能を用いますが、次の三つの事象によって、判定の要・不要と技能に対する修正値が決まります。

  • 出力STR : その時の出力STRが、判定に対する修正値の基本となります。
  • 運転状況 : どのような状況での運転なのか、ということです。「徐行運転」(人と同速度の移動)「通常運転」(普通の運転。尾行も含む)「危険運転」(カーチェイスや戦闘中など)の三つがあります。運転行為ごとの判定の要・不要を決定します。
  • 運転行為 : 具体的にどのような運転を行うか、ということです。詳しくは表2をご覧ください。技能に対する修正値を決定します。

なお「自動車運転」判定に失敗した場合の結果は、速度が落ちる、ガードレールにぶつかる、など状況に応じて判断して下さい。

表2(運転行為判定における修正値と判定の要・不要)

  • アクセル(加速。減速も含む) : -0%, 危険運転時に判定が必要
  • 急スタート : -出力STR/2(端数切上)%, 通常運転と危険運転時に判定が必要
  • ブレーキ(出力STRm先で停止) : -出力STR/2%(端数切上), 危険運転時に判定が必要
  • 急ブレーキ : -出力STR%, 通常運転と危険運転時に判定が必要
  • カーブ : -0%, 危険運転時に判定が必要
  • 急カーブ : -出力STR/2%(端数切上), 通常運転と危険運転時に判定が必要

上記以外の行動の判定に関しては、以下の説明を参考にして下さい。

(尾行)

運転者にとっては、徒歩の者を尾行する場合は「徐行運転」、他の自動車を尾行する場合は「通常運転」となります。相手を同乗者が見張るなら、通常の「目星(Spot Hidden)」判定ですみます。運転者が運転しながら尾行する場合は、「自動車運転」技能と「目星」技能の低い方が両技能の成功率となります。

(カーチェイス)

「危険運転」として扱います。車のスピードは「出力STR」ではなく「加速STR」によって決まりますので、1回のアクセル判定ごとに、相手との距離を、こちらの加速STRが相手のそれを上回る値分のメートルだけ詰めることができます。

(体当たり)

「危険運転」として扱います。命中させるには適切な運転行為の判定(表2を参照)の成功が必要です。回避するためにも、やはり適切な判定を行うことで可能となります。

その車がもつ破壊力は、車の出力STRとSIZの和によって決まります。ルールブックのダメージボーナス決定表から導き出して下さい。普通、基本ダメージはありません。(車に突起でも付いていれば別ですが。)出力STRは運転手の任意で変化しますので、その度ごとに算出して下さい。

こちらの車よりも10以上SIZが小さく、かつ固定されていないものにぶつかる場合は、相手に与えたダメージの半分だけが車体に加わります。そうでない場合は、相手に与えたのと同じだけのダメージがこちらの車体にも加わります。

ただし、相手が同方向に同等のスピードで移動している場合は、両者のダメージの差分が、双方に加わります。

なお、運転者および同乗者に衝撃に耐える準備が無い場合には、加わったダメージに対するCONによる抵抗ロールを行って下さい。失敗した場合、その者はすぐには次の行動ができなくなります。

(射撃戦)

運転者にとっては、「危険運転」となります。

運転者以外の者が撃つ場合には、両者の加速STRの差分の%だけ射撃が難しくなります。運転者が運転しながら撃つ場合には、「自動車運転」と射撃用技能の低い方の値を両方の判定に使わねばなりません。

射撃戦以外の戦闘行動(接近してパイプで殴る、など)の場合にも同様に判定して下さい。

なお、攻撃を受けた者が車体の陰に隠れていた場合には、車体のAPを適用して良いでしょう。

(パンク)

何らかの理由でタイヤにダメージが加わった場合、ダメージが車体のAP(タイヤの厚さも表しています)を1ポイントでも上回ったら、そのタイヤはパンクします。

運転手は直ちに急ブレーキ判定を行って下さい。失敗した場合は、転倒(下記項目を参照)などによってダメージが加わります。パンクしているのに無理矢理進む場合は、出力STRの2倍の%を技能から差し引いて判定して下さい。

(ジャンプ)

運転中の車は、水平方向に加速STR分の距離(メートル)を跳躍することができます。無事の着地には「自動車運転」技能(修正なし)による判定が必要です。失敗した場合は停止もしくは転倒します。

着地の際には、すべての乗員は「ジャンプ」判定を行って下さい。失敗した場合は舌をかむ、頭を打つなどしてしばらく行動できなくなります。

(転倒)

車が転倒した場合、その車が転倒時に持っていた破壊力分のダメージが車体に加わります。(APは有効)

その結果車が大破した場合は次の項目に従って下さい。大破しなかった場合でも、そのダメージの1/10がすべての乗員に加わります。

(大破)

車のHPが2以下になった場合、その車は壊れ、動かなくなります。(時間をかければ修理は可能です。)走行中にそうなった場合は、ブレーキ判定を行って下さい。失敗したら転倒するかどこかにぶつかります。体当たりか転倒の項目に従って下さい。

車のHPが-3以下になったら、その車は大破し、場合によっては炎上します。最も幸運な者が、走行中に1回、止まった段階でもう1回幸運ロールを行います。どちらかに失敗した段階で、車は炎上します。両方成功したなら炎上しません。(どちらにせよ修理はできません。)炎上の段階で、飛び降りたり、適切な技能判定もしくは幸運ロールに成功した者は脱出できます。逃げ遅れた者は、大破する時に車が持っていた破壊力分のダメージを受けます。

(車から飛び降りる)

走行中の車から飛び降りた者は、「ジャンプ」判定を行って下さい。成功した場合は、その段階で車が持っている破壊力の1/2のダメージを、失敗した場合は全てのダメージを受けます。柔らかい場所に飛び降りる場合は、受けるダメージは更に半分になります。

(修理)

車が大破していなければ、「機械修理(Mechanical Repair)」技能によって修理することができます。きちんとした工具が無い場合は、何かで代用しても成功率は半分となります。

1日修理してから「機械修理」判定を行って下さい。成功すれば、1D3ポイントのHPが回復します。修理工場を使うことができたなら、1D3ではなく2D3で判定して下さい。HPが3以上になれば、通常の運転が可能となります。

おわりに

以上が粗削りながら私が作成した「クトゥルフの呼び声」用自動車運転ルールです。ここで白状しておきますが、テストプレイは行っておりません。数値的な問題がある場合は、後日変更・調整していきたいと考えております。

具体的な判定の例も併記したかったのですが、間に合いませんでした。またオプションとして、車体における部位命中なども準備しているところで、これらは後日追加という形で発表するつもりです。

皆さんのご感想をお待ちしております。