サポート体制の現状について (1997年執筆)
本論考は、1997年9月29日に発表されたものです。文中の趣旨が、現在の筆者の考察とは異なる場合もありますので、ご注意願います。
理想的なサポートを探るための一考察
(注:この文は、元々は「日本卓上RPG界補正計画」の補足として書かれたものです。)
現在、あるゲームシステムに対するサポートとしての出版は、最も多いのがそのゲームを題材にした小説やリプレイで、次いでシナリオ集、特に少ないのがサプリメント類(追加資料や追加データなど)であろうと思われます。それも、文庫版で出版されている「ソードワールドRPG」など一部の作品では多く出版されていますが、他の大部分の作品、特に数年前の翻訳RPGともなると皆無に等しいのが現状です。
ここで、何故シナリオ集やサプリメント類が多く出版されないのかを推理してみましょう。可能性としては次の3つが考えられます。
- サプリメント等は、出版しても見合うだけの部数が売れないから。
翻訳物において、大部のサプリメントを翻訳するためには多くの費用と時間がかかります。作成する場合も少なからず時間と手間が必要です。必要なものであっても、リスクに見合うだけの部数が売れるという感触が無ければ出版計画には載せてもらえないでしょう。(各出版社においてそれを判断している人間がどれほどRPGに詳しいかという疑問もありますが。)- そのゲームには、サプリメント等を出す必要がないから。
何らかの理由で、デザイナーがシナリオ集やサプリメントを出版する必要はないと判断する場合がありえます。理由としては、基本セットだけで必要なものはすべて出した、シナリオはマスターが作れば良い、追加データや追加資料は自作しているマスターを混乱させる、などが考えられます。- そのゲームのサプリメントなどを作る者がいないから。
何らかの理由で作る者がいなければ、当然出版は不可能です。理由としては、デザイナーの興味が無くなった、主要関係者が移籍した、他の仕事(新しいシステムのデザイン等)が忙しい、基本セットしか出さないつもりだったので既に担当スタッフは解散した、などが考えられます。以上の三つの可能性は、当然の事ながら、いずれも売手の側の判断によるものです。出版するかしないかは出版する側が決めるのですから当たり前ですが、これは現在のサポート体制の特徴の一つであることは憶えていて良いでしょう。
さて、理想的なサプリメント(シナリオ集なども含む)出版とはどのようなものでしょうか。作り手や売手の都合を考えなければ、「必要かつ良質で、安いもの」を求めないものはいないでしょう。このような作品が大量に出回れば、小遣いの遣り繰りが嬉しい悩みとなりましょう。
しかし夢のような出版を現実にするためには、いくつかの条件が前提となります。
- 市場調査
どのようなものを買手が必要とし、また欲しがっているかを調べる手段が無ければなりません。買手が取捨選択できるほど多種の出版が過去にあれば、その実績からある程度判断できます。慎重にやればアンケート調査は常に有効です。買手の意志を問わずに、作り手が作りたいものをそのまま売っていては、数を稼げるはずはありません。- 品質
その作品は実際に使用に耐えられるものであるかどうか、という問題です。シナリオ集であればキャンペーンなどの途中に使うにも融通が利くこと、追加データや資料などなら誰もがそれを使いたくなるほどの出来・魅力を持っていることなど、作品自体の出来もさる事ながら、使いやすさの工夫も、作り手の腕の見せ所でしょう。少なくとも、値段以上の品質があったと買手が感じれば、その者は次の作品も必ず買うでしょう。- 値段
本来、サプリメントやシナリオなどのサポートのための作品は、あった方が良いかもしれないが無くても構わないのが筋です。基本セットだけで事足りるようにするか、複数のサポート作品の中から取捨選択が容易に出来るようにすべきでしょう。とはいうものの、出た作品はどれも欲しいというのが買手の本音ですから、気軽に買える値段であることが重要です。ただ単純に安ければ良い訳ではありませんから、工夫が必要です。例えば、同時に作ったとしてもあえてテーマ別の小冊子に分け、単価を安くするという方法があります。高値のせいで悩んだあげく買わなかった者も、その1/2、1/3をそこそこの値段でとなれば買う可能性が出てきます。内容が良ければ残りも買うでしょう。以上、長くなりましたが、理想的なサポート体制につながる道筋を探るための考察を述べました。