GM二人制についての一考察
丹川幸樹さんの下記論考を拝読しました。氷川霧霞さんのアイデアを独自に発展させたもの、とのことなので、そちらも併記しておきます。
- 丹川幸樹「どうしてペアGMなんだろう?」(哀心よりお悔やみ申し上げます)
- 丹川幸樹「ふたりGMの進め方」(Polorblue)
- 氷川霧霞「ペアシナリオメイキング」(氷川TRPG研究室)
ゲームマスター(GM)を複数人でやることについて、私も以前から研究しておりました。良い機会なので、一文したためることとします。
私はプレイヤーよりもGMを担当する方が好きですが、GMの役割は多岐に亘るため、何人かで分担すれば楽できるな、と度々思いました。それに、プレイヤーたちが相談している時など、眺めているだけでなく、こちらも誰かと悪巧みをしたいじゃありませんか。
そこで、どのような役割分担をすればよいか、あれやこれやと考えました。まずはGMを二人でやるとして、二つの役割のどちらも面白そうなら、あとは好みで選ぶか、どちらでもできる準備をしておけばよろしい。想定するのは、『クトゥルフ神話TRPG』(CoC)のように「事件の解決」がプレイヤー用キャラクター(PC)の目標となるゲームシステムです。私が好きなので。
その一案を、以下に示します。
- GMの役割を「舞台担当GM」と「事件担当GM」とに分けて、どちらかを選ぶ。
- 舞台担当GMは、シナリオの舞台となる地域や住人NPCなどを用意し運用する。
- 事件担当GMは、シナリオで起こる各事件や関係者NPCなどを用意し運用する。
- 事件担当GMは、シナリオと絡められれば、舞台担当GMの設定を用いてよい。
- 舞台担当GMの担当NPCは中立だが、PCの言動により協力または敵対しうる。
ゲームシステムにおいて「舞台」と「事件」とを結びつける概念があれば、両GM同士の事前打合せは最低限で済みます。例えば「CoC現代日本」で結べば、「舞台」設定も「事件」設定も、ある程度の範囲に収めることができるでしょう。「孤島」や「雪の山荘」のような極端に限定された状況での事件には向きませんが、それらは元々「事件」に集中させるための工夫でもあります。
事件担当GMは、シナリオそのものの運用に集中することができます。プレイヤーがシナリオと無関係な行動に出たなら、舞台担当GMに任せれば良いのです。また、舞台担当GMが用意した場所や人物が適していれば、それらをシナリオの中枢に組み込むこともできます。
舞台担当GMは、単なる舞台係ではありません。使い慣れた情景描写や定番NPCなどを駆使して、シナリオごとの使い捨てではない、魅力的な舞台を用意し運用する楽しみがあります。シナリオ本編は事件担当GMに任せて、あまりやきもきしなくて済みます。
舞台担当GMは日常担当、事件担当GMは非日常担当、といっても良いでしょう。少なくとも私は、どちらの役割も楽しめそうに思います。というか、やってみたい。あいにく今まで機会はありませんでしたし、今後も無いかも知れませんが。
プレイヤー側にしてみれば、NPCなどをどちらのGMが担当するかで、それがシナリオ本編か否かが分かります。また、舞台担当GMが動かすNPCは、シナリオの都合に縛られない意味では「中立」ですから、うまく立ち回れば味方につけることもできるでしょう。少なくとも、そうしてもシナリオ運用の負担を増すことはありません。
以上のアイデアは、本当はもう少し考察を進めて、自作ゲームシステム「A.D.A.M.」に搭載するつもりした。が、「A.V.O.N.」も随分放ったらかしだし、「Metsys」や「ゲオマキナ」まで始めちまったし、私の執筆ペースだとあと数年~十年はお蔵入りのままになりそうなのですね。というか、忘れちまいそうなので、ここに書いた次第。ひょっとして誰かの何かの、参考になれば幸い。