クトゥルフ神話TRPGを「神話探偵」で遊ぶ
『クトゥルフ神話TRPG』(CoC)には、様々な「遊び方」があります。ここでは、私が好きな「神話探偵」(Mythos Detective)という形式で遊ぶことについて紹介します。
「神話探偵」とは、クトゥルフ神話を扱う卓上RPG(TRPG)のひとつ、Pelgrane Press社の『Trail of Cthulhu』(ToC)で採用された「Campaign Frame」(キャンペーン構成)というアイデアの一例です。その名の通りキャンペーンプレイ(数回連続したゲームプレイ)を想定していますが、一回のみのゲームプレイでも用いることができます。またCoCや「現代日本」などの世界設定にも流用可能です。
ゲームマスターが用意するシナリオに、プレイヤーが担当するキャラクターをどのように関与させるか、には幾つかの方法があります。ゲームプレイ中にプレイヤーが自分で決める、あらかじめゲームマスターが決めておきプレイヤーに伝える、また、関与の仕方を事前に話し合って決めておく、など。「Campaign Frame」は、「関与の仕方を事前に決めておく」方法の一例です。(ちなみに拙案「導入型」も同様の一例。)
「Campaign Frame」は、ToCの基本ルールブックに三つ、サプリメント『Arkham Detective Tales』(アーカム探偵物語)に一つ(神話探偵)の、計四種が挙げられています。以下は概略。
- 「The Armitage Inquiry」(アーミテッジ研究室)。ミスカトニック大学のヘンリー・アーミテッジ博士は、探究の仲間を募っている。探索者はその一員(同大学の教授や学生、司書や職員、警備員など)として、調査に駆り出される。
- 「Project Covenant」(プロジェクト・コヴナント)。1929年インスマス襲撃のために結成された組織は、その後も継続している。探索者はその一員(諜報員や軍人、組織に雇われた在野の技術者など)となって、神話勢力に戦いを挑む。
- 「Book-Hounds of London」(ロンドンの猟書家たち)。文明国家の闇市場では、稀覯書が大金に代わる。稀には、禁断の知識を秘めた魔道書も。探索者は猟書家などとして、陰謀や暴力、魔術までも渦巻く世界に身を投じていく。
- 「Mythos Detectives」(神話探偵)。大都市で連日発生する犯罪事件。関係者は知っている、その一部が「普通ではない」ことを。探索者は探偵(連邦捜査官、刑事、私立探偵など)とその仲間(各種専門家)として、真実に迫っていく。
これらを参考に、「Campaign Frame」を自作することもできます。私が「神話探偵」をCoCで現代日本を舞台にして遊ぶのに用いるのも、半ば自作のようなものかも知れません。ルールシステムの変更、世界設定の変更(ToCは「1930年代アメリカ」が基本)、またコンベンションでの使用を想定して、色々と手を加えますので。例えば、次に示す通りです。
- 舞台となるのは、人口が集中する故、犯罪も多発する大都市。現代日本なら、東京などが起点となる。
- ゲームプレイは、活劇的な傾向とする。安楽椅子探偵よりも、「現場百遍」の探偵として活躍していただきたい。恐怖しても絶望はせず、解決への希望を抱いて危険に立ち向かう。避けた危険は、後でまとめてやってくるかも知れない。
- クトゥルフ神話の勢力は、どこにも存在するが、知られてはいない。喧伝しても、誰も信じない(信じたくない)だろう。ただし神話は超人間的であっても、勢力は世俗的な動機によって動いている。それ故、その解明に勝機がある。
- 探索者は、私立探偵とその仲間。仲間には、警察関係者も含めて、あらゆる職業の人間がなりうる。既に仲間なので、例えば刑事とヤクザなど、職業的対立関係などは解消済みとして、プレイヤーはキャラクターを設定すること。
- 「継続して登場するNPC」(歴史上や創作上の人物)および「ルールの変更点」は、適用しない。
- ゲームプレイの雰囲気は、サスペンス・ミステリーな2時間ドラマを参考とする。H.P.ラヴクラフト原作の火曜サスペンス劇場、みたいな。観たことない方は、Youtube.comなどで「火曜サスペンス劇場 op」を検索されたし。
実のところ「神話探偵」という遊び方は、いわゆる「コズミック・ホラー」ではありません。ホラー仕立てのミステリーアクション、というところです。もっとも、ルールシステムを何ら変更するわけではありませんので、危険度は変わっていません。プレイヤーがキャラクターに何もさせなければ、事件は最悪の結果に至ります。解決のために行動すれば、何もしないよりはマシな結果が得られるでしょう。それが、キャラクター=「探索者」の勝利となります。
クトゥルフ神話の実在する世界で、探偵とその仲間となって、恐るべき事件に立ち向かう。このような冒険に興味を持たれた方は、この「神話探偵」という遊び方を、是非お試しください。