シーンを説く前の基礎知識

主に紙魚砂さんの「シーンのアクセス構造(1)」「同(2)」「同(3)」に触発されて、時間と空間との処理方法についてまとめます。これらを知っているか否かは、「シーン」の考察に影響するのではないか、と思いましたので。

卓上RPGにおいて、ゲーム内の時間と空間とを扱うために、二つの処理方法があります。そのひとつ「単位による処理」は、時間や距離などを計測しながらゲームプレイを進める方法。もうひとつ「場面による処理」は、より大雑把な「場面」として示す方法です。

  • 「単位による処理」
  • 「場面による処理」

単位による処理」で用いられる単位は、様々です。時間を示す単位には、時分秒などの他、ターンやラウンドなどがあります。また距離を示す単位としては、メートルやフィートなどの他、ヘクスやマスの数で測る場合があります。これらの単位によって、計測開始時点から、キャラクターの移動や行動によってどれだけの時間が経過したか、どの方向にどれだけの距離を移動したか、が表現されます。この処理方法は、ダンジョン内での移動や、戦闘が発生した際に、しばしば用いられます。

場面による処理」では、基準となる「ある時間のある場所」が指定されます。「ある夜の某酒場」と大雑把な場合もあれば、「2月5日金曜日19時25分の東京駅4番ホーム」と細かく示されることもあります。その後の時間経過や移動などは概ね大雑把に、プレイヤーの体感時間や常識的感覚に合わせて判断されます。この処理方法は、NPCとの会話や、情報収集などの際に、多く用いられます。

後者の「場面」表現は、人間が時間と空間とを描写する際の、最も自然な方法です。小説や映画における「場面」以前に、強いて単位で示そうとしなければ、自然とそのように表現するのです。

さて、「単位による処理」と「場面による処理」とをゲームプレイでどう扱うかには、次の三つの方法があります。

  1. 「単位による処理」のみ
  2. 「単位による処理」を主とし、「場面による処理」で補う
  3. 「場面による処理」を主とし、「単位による処理」で補う

1の「単位による処理」のみで進める方法は、ダンジョン探索のみのシナリオなどで用いられます。ダンジョンに入った時点から計測をはじめ、キャラクターが移動した距離や行動などによって時間が経過し、経過した時間によって無作為な遭遇が発生する、というようなプレイです。森や海などを舞台に、時間を計りながらの辺境探索シナリオでも可能です。

2の「単位による処理」を主とし、それを「場面による処理」で補う方法は、1の発展形です。ダンジョン探索の前に「酒場でダンジョン探索を依頼される場面」を入れる、辺境探索シナリオで非戦闘イベントを「場面」として処理する、目的達成後に感動的結末を「場面」として描写する、などのようなプレイです。

3の「場面による処理」を主とし、それを「単位による処理」で補う方法は、市街探索シナリオなど、情報収集などのイベント発生場所が分断されている場合に用いられます。それらは皆「場面」として処理され、戦闘やカーチェイスなど、時間や空間の厳密にすべき場合のみ「単位による処理」で解決します。現代や未来を舞台とする場合では、この方法が主流です。

理論上は「場面による処理」のみ、というのもありえますが、戦闘では行動の機会の均等性が求められるためか、現行のルールシステムには見受けられないようです。

ちなみに、いわゆる「シーン制」や紙魚砂さんの「シーン管理」は、上記3に含まれます。扱う範囲は「3⊃シーン管理⊃シーン制」のような印象ですが、後二者がどの程度重複するかは、取りあえずどうでもいいや。

ちなみに私は、「場面」を「シーン」と呼ぶことに、ゲームプレイにある性格を与える機能がある、と考えております。そう考えつつ、各位の今後の考察発展に期待したいと思いますよん。