初心者専用の遊び方

私が考える「初心者専用の遊び方」(初心者専用遊戯法)とは、プレイ参加者が共有すべき「コンテクスト」(背景認識)が極めて厳密に定まっているものです。キャラクター以前に、プレイヤーとゲームマスターとが「何をすれば良いか」が限定されるため、責任も負担も軽減されます。卓上RPGを生まれて初めて遊ぶ「初心者」に適した遊び方です。

ここでは、そのような「初心者専用の遊び方」を三例あげます。ただし、実際の「遊び方」は遊びの現場で個別に構築されるものですから、その軸となる「シナリオ形式」のみを示すに留めます。

一番目は、無作為に発生させたイベントに対処していく、という遊び方。

ランダムイベント
プレイ前に、「ランダムイベント発生表」を用意する。それが添付されたゲームシステムを選ぶと楽。
無作為に決められた場所、または任意の場所にPCがいるところから、プレイ開始。
ゲームマスターは「ランダムイベント発生表」により、NPCの遭遇などのイベントを起こさせる。
プレイヤーはキャラクターを用いて、個々のイベントに直観的に対処する。
上記のようなイベントの発生と対処とを、(終了時刻等による)プレイ終了まで繰り返す。
なお、イベントの連続が「起承転結」のような展開にならなくて良い。

二番目は、ファンタジーRPGでお馴染みのダンジョンを無作為に作成しつつ、攻略していく遊び方。

ランダムダンジョン
プレイ前に、「ランダムダンジョン作成表」とダンジョン用「ランダムイベント発生表」とを用意する。ゲームシステムに添付されていれば楽。
ダンジョン(廃墟や洞窟など)の入口にPCがいるところから、プレイ開始。
プレイヤーの進路に合わせて、ゲームマスターは「ランダムダンジョン作成表」により部屋や通路を作成し、描写する。
ゲームマスターは「ランダムイベント発生表」により生物との遭遇などを起こさせ、プレイヤーはそれに対処する。
上記のようなダンジョン攻略を、(攻略完了などによる)プレイ終了まで繰り返す。
なお、最後の部屋に最強の敵(ラスボス)がいるとか、その後で最大の報酬が得られるとかの構成にならなくて良い。

三番目は、用意された最善のストーリーを完成させるべく、皆で協力していく、というもの。日本の一部ゲームシステムでは一般的な「遊び方」となっているように思われます。

ストーリー支援
プレイ前に、まず理想的なストーリーを作成し、それを「場面」に分解。各「場面」で起こる出来事や登場する人物、どうなったら次の「場面」に進むか、などを決めておく。
最初の「場面」にPCが登場するところから、プレイ開始。
ゲームマスターは「場面」の登場人物や状況の描写によって、キャラクターがとるべき行動を暗示する。
プレイヤーはキャラクターが「何をすれば良いか」を察して、そのように行動させる。
上記のような「場面」の連続が、理想的なストーリー通りに最後までいけば、成功裏にプレイ終了となる。
いわゆる「フェイズ制」「シーン制」「ハンドアウト」などの手法は、この遊び方に最適であり、その使用が推奨される。

ちなみに。三番目の「ストーリー支援」のキーワードは「リアクション」。プレイヤーは受身に徹し、自分勝手に「アクション」に走るのではなく、ストーリーに対して適切な「リアクション」を返すことが肝要です。この遊び方でのキャラクター(PC)は、プレイヤーが自分で動かせる「駒」ではなく、ゲームマスターが動かすストーリーの「部品」なのですから。

他方、他の遊び方では大抵、プレイヤーの方から主導的に「アクション」しないと上手く遊べません。上記「ランダムイベント」や「ランダムダンジョン」では、事前に用意されたストーリーが無いこと明白ですので、プレイヤーも気後れせずに「アクション」できるようになっています。

また、いわゆる「シナリオクラフト」は、「ランダムイベント」と「ストーリー支援」とを組み合わせた遊び方と言えます。こちらでもプレイヤーとゲームマスターとが「何をすれば良いか」が限定されていますので、「初心者専用の遊び方」のひとつと捉えてよいでしょう。

「ビルドダンジョン」や「ストーリー改編」など、他のシナリオ形式だと、もうちょっと面倒になります。今回は省略。

ここまでで、「ルールシステム」「世界設定」そして「遊び方」の三要素を説明し終えました。この後は、これら三者の組み合わせについて考えてまいります。