遊び方(遊戯法)考

ルールシステム、世界設定と来て、残るは「遊び方」(遊戯法)。この概念について、私の考えをまとめます。

卓上RPGにおける「遊び方」「遊戯法」とは、「ルールシステム」と「世界設定」とを使って、どのように遊ぶか、という方法論です。同じルールと世界とに異なる「遊び方」を用いることが可能、異なるルールと世界とを同じ「遊び方」で扱うことも可能です。

「ゲームデザイナーの意図」通りに遊ぶべきだ、という意見をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。しかしながら私は、ゲームデザイナーは必ずしもどのように遊ぶかまで規定していない、仮にそうしていたとしても気にする必要はない、どのように遊ぶかくらい遊び手が自分で決めれば良い、と考えています。

さて、このような「遊び方」は、ゲームプレイに「コンテクスト」(背景認識)を与えるものです。コンテクストとは、「文脈」「脈絡」などとも訳されますが、コミュニケーションを成立させるために共有される認識のことです。卓上RPGにおいては、次のような事柄についてプレイ参加者同士が認識を合わせようとします。

プレイ参加者の関係
ゲーム以前からの友人か、サークルを守り立てる仲間か、一日遊ぶだけの赤の他人か。
誰かが誰かを楽しませるのか。誰もが自分自身で楽しむのか。
ルールシステムの使い方
どのデータ、どのルールを使うか。どれを使わないか。非公式のデータやルールを使うか。
判定結果などを、どれくらい厳密に適用するか。都合によってはルールを曲げて良いか。
世界設定の使い方
どの設定を使うか。どれを使わない(無視する)か。非公式の設定を追加して良いか。
シナリオの舞台として、どれだけの時間、どれだけの範囲までキャラクターが行動すると想定するか。
シナリオ形式
シナリオにおいて、何を目的とするか。そのために、どのような行動決定が評価されるか。
あらかじめデザインされた内容から、どれくらい外れても良いか。想定外になったら止めるか。
キャラクターの関係
キャラクター設定は、どれくらい活かされるか。シナリオと直接関係なければ無視されるか。
キャラクター間で、どのような人間関係を結んで良いか。プレイ中に関係を結ぶ場面を入れるか。
セッション形式
1シナリオを、1セッションで終えるのか。数セッションかけてやるのか。
1セッションのみ遊ぶのか。数セッションでの1シナリオか。もっと長く続けるキャンペーンか。

上記の内、基礎となるのは「プレイ参加者の関係」ですが、軸となるのは「シナリオ形式」です。シナリオ形式が決まれば、他の要素もある程度方向性が定まります。例えば「ダンジョン攻略」と呼ばれるようなシナリオ形式なら、使わないルールシステムや世界設定が決まってきますし、一緒にダンジョンを攻略しないようなキャラクター関係は避けるべきです。

これらをコンテクストとすることで、キャラクターに取らせるべき行動の「選択肢」が決まります。「ダンジョン攻略」なのに「最後までダンジョンに行かない」、「冒険者」(Adventurer)なのに「一切の危険を冒さない」などは、選択肢に含まれません。

コンテクストが厳密な程、キャラクターに選択可能な行動は少なくなり、プレイヤーの思考と決断への負担も減じます。「何をすれば良いか」が唯一つなら、プレイヤーは何も悩まなくて済むわけです。もちろん、やることが毎度ひとつしか無ければ、そのような遊びに飽きるのは時間の問題でしょう。ベテランにも手応えのある「初心者向け」として遊びたいなら、コンテクストにも若干の「遊び」(余裕)が必要です。

...余談ながら、ゲームマスターの事情はもう少し複雑です。「プレイヤーを楽しませるべし」やら「時間通りに終わらせるべし」やらの教条(ドグマ)を無視できれば、負担はかなり減少します。後は、やることを単純化するくらいでしょうか。ルールそのままの処理しかしないとか、シナリオそのままの展開しかさせないとか。

初心者専用の遊び方」(初心者専用遊戯法)では、とにかく一回、試しに遊んでみよう、という相手のみを想定します。コンテクストは厳密であるほど良い、極端には、時間が潰せれば内容などどうでも良い、ということになります。

以上の考えに基づいて、「初心者専用の遊び方」の例を、次回記します。