卓上RPGにおけるメタゲーム
先行する記事「メタって何?」と「卓上RPGの階層構造の基本」とに基づき、卓上RPGにおける「メタゲーム」について整理します。
- ゲーム (ゲームプレイ)
- キャラクター(PCとNPC)を行動させることで、舞台世界を変えていくこと。(広義のゲーム)
- キャラクター自身の知識などによって、キャラクターの行動を決めること。(非メタゲームとしてのゲーム)
- メタゲーム (メタゲームプレイ)
- キャラクターが知らない、プレイヤーやゲームマスターの知識などによって、キャラクターの行動を決めること。
どのような「プレイヤーやゲームマスターの知識など」を用いるかによって、多種多様な「メタゲーム」が成立します。以下、それを細分化して、各々の例を挙げてみます。
- ルールシステム
- 使用するルールシステムにおいて、より命中し易く、ダメージの大きい武器を選ぶ。
- 魔法でしか傷つかない怪物に、魔法を使えないキャラクターが出会った時、そうと知らなくても即座に逃げる。
- 悪漢がヒロインの首筋にナイフを当てて人質に取った時、最大ダメージでもヒロインのヒットポイントはゼロにならないので、迷わず悪漢を攻撃する。(いわゆる「首ナイフ」問題)
- 世界設定、関係資料
- 漁村インスマウスの図書館に稀覯書を閲覧しに行くのに、特に理由なく、ショットガンや手榴弾を隠して持っていく。
- シナリオの元ネタがある映画と気づいたので、それと同じ展開になるように行動する。
- リプレイではキャラクターが酒場にいる場面から始まっていたので、自分のキャラクターも酒場にいることにする。
- 本人の技量、知識
- プレイヤー自身の話術で、キャラクター同士の交渉を成功させる。
- ゲームマスターがアンデッド好きと知っているので、取り合えずアンデッド対策の装備を持っていくことにする。
- 空間に充満した粉末に引火すると大爆発を起こすことがあるので、それをキャラクターが知らなくても、それで敵を攻撃する。(いわゆる「粉塵爆発」問題)
- 本人の思想、信条
- プレイヤーが人種差別を嫌っているので、キャラクターにも人種差別をさせない。
- プレイヤーが暴力を嫌っているので、キャラクターにも戦闘をさせない。
- プレイヤーが宗教を嫌っているので、キャラクターにゲーム世界内の宗教を攻撃させる。
- 現実の時間
- 予定時刻までにゲームプレイが終わるように、キャラクターを行動させる。
- 現実の特定の時刻になると、ゲーム内でのイベント(爆弾が爆発するなど)が発生する。
- (なお、1シナリオに数セッションかける場合など、予定時刻になったらプレイの続きを次回とするのは、これに該当しない。
- 現実の人間関係
- あるプレイヤーが初心者(または異性)なので、そのキャラクターに対して他のキャラクターが優しく接する。
- あるプレイヤーが初心者(または異性)なので、そのキャラクターに対しては敵が強力な攻撃をしない。
- あるプレイヤーがサークルの先輩なので、そのキャラクターに対しては敵が強力な攻撃をしない。
- 採用するRPG理論
- 戦闘はPCが楽に勝つものと苦しんで勝つものとしか無い、として、すべての敵と迷いなく戦う。
- 戦闘でPCが勝つか負けるかは時の運、として、逃亡や降伏も選択肢に入れて判断し、可能なら戦いは避ける。
- 展開が「起承転結」の形に収まるのが良い、として、序盤~中盤はクライマックスへの準備行動に徹する。
- 意義ある決断を下すことこそが面白い、として、そのような機会が与えられるようにする。
- PC間の掛け合いこそが面白い、として、別行動しなくてはならない状況はなるべく避ける。
- 自分の「見せ場」こそが面白い、として、キャラクターごとの「見せ場」が平等に与えられるようにする。
...以上、他にも色々と考えられますが、この辺で。
「メタゲームとは良いものだ」と考える者は、自分が「良い」と思う行為のみを集めて「メタゲーム」と称し、それ以外は「悪いゲームプレイ」と呼んだりします。「メタゲームとは悪いものだ」と考えるなら、その逆。
多様性を理解すれば、好き嫌いはあるにせよ、ひとつひとつを選択肢として受け入れることが可能となります。そうすれば、様々なプレイの現場に柔軟に対応し、そして楽しむことができる、と私は考えます。