「管理」を語るための用語集
卓上RPGを「管理して遊ぶ」ということを語るために、私は「誘導」「皆にとって最も面白い」「自由度」などの言葉を用いました。これらについて整理します。
- 管理 Control
- 「管理」とは、管理する者が行動を決め、管理される者がそれに従うことです。
- 例えば「職業選択の管理」とは、国家機関などが職業を決め、それに従って就職することです。
- 管理して遊ぶ
- 卓上RPGを「管理して遊ぶ」とは、ゲームマスターが、プレイヤーキャラクター(PC)が取るべき行動を、そのプレイヤーに伝えて遊ぶことです。
- PCが取るべき行動はシナリオで決まっており、それを的確に伝えるのがゲームマスターの腕の見せ所です。
- 管理されて遊ぶ
- 卓上RPGを「管理されて遊ぶ」とは、プレイヤーが、自分のPCが取るべき行動を、ゲームマスターから伝えられた通りに取って遊ぶことです。
- PCが取るべき行動はゲームマスターから伝えられ、それを的確に読み取るのがプレイヤーの腕の見せ所です。
- 皆にとって最も面白い
- 「管理して/されて遊ぶ」ことの目的は、楽しむこと、「皆にとって最も面白い」ゲームプレイを完成させることです。
- 「皆にとって最も面白い」かは自分だけでは分かりません。公式リプレイなどの資料を真似ることから始めます。
- 目的としての物語
- 公式リプレイではしばしば、キャラクターの行動によって物語が織りなされ、しかも一回のプレイで完結しています。
- 一回のゲームプレイ(セッション)で完結した物語ができあがれば、「皆にとって最も面白い」ゲームプレイができた、と見なすことができます。
- 何をすれば良いか?
- 「皆にとって最も面白い」ゲームプレイのために、PCが「何をすれば良いか」、プレイヤーがPCに「何をさせれば良いか」は、プレイヤーが自分勝手に決めてはいけません。
- ゲームマスターが「何をしても良い」「何でもできる」と言うだけでは、「何をすれば良いか」が分かりませんから、プレイヤーは「何もできない」ことになります。
- 誘導 Direction (または、Herding)
- 管理する者は、進むべき道筋から管理される者が逸脱しないよう、随時誘導します。
- 例えば「職業選択の管理」では、選ぶべき職業を示したり、それ以外の職業を選ばないように仕向けたりします。
- 暗示による誘導
- ジャンルや元ネタに基づく「お約束」、場の「空気」のような、暗黙の了解とされる概念によって、PCが「何をすれば良いか」が伝えられることがあります。
- このような誘導は、これらの概念がゲームマスターとプレイヤーとの間で共有されていないと、うまく機能しません。
- 暗示による誘導は、ルールシステムや世界設定よりも優先されます。
- 明示による誘導
- ハンドアウトや今回予告、シーン制のような、定式化された情報提供によって、PCが「何をすれば良いか」が伝えられることがあります。
- このような誘導には「ぶっちゃけ」も含まれますので、大抵の場合「何をすれば良いか」を正しく伝えることができます。
- 明示による誘導は、ルールシステムや世界設定、暗示による誘導よりも優先されます。
- 時間管理 Time Management
- ゲームプレイが時間通りに終わるよう、プレイヤーをうまく誘導することは、ゲームマスターに任されます。
- 時間通りにゲームプレイが終われば、ゲームマスターがうまく誘導し、プレイヤーがうまく誘導されたことの証明となります。
- 時間通りにゲームプレイが終わらなければ、ゲームマスターがうまく誘導しなかったか、プレイヤーがうまく誘導されなかったことの証明になります。
- 自由度 Degrees of Freedom
- 「管理」に支障が無い範囲で、管理される者には選択肢が与えられます。この選択肢の多少を「自由度」と言います。
- 例えば「職業選択の管理」で、幾つかの職業から好きなものを選んでよい、という場合です。
- 「自由度」は、管理のために与えられるものですから、「管理度」(Degrees of Control)とも言えます。
- 自由度が低いシナリオ
- PCの行動としてプレイヤーに許される選択肢が少ないシナリオは、「自由度が低い」と評価されます。
- 最も「自由度が低い」シナリオでは、選択肢は一つしかありません。それを選ばなければ、PCが死ぬか、選ぶまで先に進めないか、ゲームマスターが勝手にその選択肢を選んだことにしてしまいます。
- 自由度が高いシナリオ
- PCの行動としてプレイヤーに許される選択肢が多いシナリオは、「自由度が高い」と評価されます。
- 最も「自由度が高い」シナリオでは、プレイヤーが思いつくより多くの選択肢が与えられます。多過ぎる余り、「どれを選べば良いか、分からない」状態に陥ることもあります。
- セッション成功
- 参加者全員が楽しんだなら、そのセッションは成功です。
- 例えば、一回のゲームプレイで完結した物語ができあがれば、それは「皆にとって最も面白い」ゲームプレイですから、そのセッションは成功です。
- セッション失敗
- 参加者全員が楽しめなかったなら、そのセッションは失敗したことになります。
- 例えば、ゲームプレイが物語のような展開にならなかったり、そうなりそうでも時間内に終わらなかったなら、そのセッションは失敗です。
- 「事故」とも言います。誰の責任でもない不運な巡り合わせ、というニュアンスが込められます。
- 管理責任
- ゲームマスターには管理する責任が、プレイヤーには管理される責任があります。
- セッションが失敗した場合、ゲームマスターは、プレイヤーが誘導に従わなかったためと判断するかも知れません。
- セッションが失敗した場合、プレイヤーは、ゲームマスターがうまく誘導しなかったためと判断するかも知れません。
- 糾弾会 (または、反省させる会)
- セッションが失敗した後、誰の責任かを追及し、糾弾する会を催すことがあります。
- これを「反省会」と称することもありますが、適切な名称ではありません。
- 称賛会 (または、ディスカッション)
- セッションが成功した後、互いに褒め合う会を催すことがあります。ディスカッションとも言われます(あまり適切な名称ではありませんが)。
- 反省や糾弾のような「ネガティブな発言」は、「皆にとって最も面白い」という評価に反しますので、この会では忌避されます。
以上です。
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