参考 : 管理されたダンジョン

ここで、「自由なダンジョン」とは本質的に異なる、「管理されたダンジョン」について触れておきます。「自由なダンジョン」が「遊び場」であるのに対し、「管理されたダンジョン」とは「最も面白い」ゲームプレイを共有するための「作品」のようなものです。

「管理されたダンジョン」では、作成時に「最も面白い」展開が定められています。プレイヤーキャラクター(PC)が何のためにダンジョンに赴き、どのようにダンジョンを探索し、どう探索を終えれば「最も面白い」かを、シナリオ作成者は誠心誠意追求します。

そしてその展開が成り立つようにダンジョンの内部構造や登場人物設定、流布される情報などが設定されます。これらを介して、ゲームマスターはプレイヤーに「最も面白い」展開を伝えようと努め、プレイヤーもそれを過たず読み取ろうと励むのです。この「誘導」の成否が、そのまま「管理」の成否に繋がります。

遊び始めには、PCが何のためにダンジョンに赴くのか、という動機付け(Motivation)が行われます。もし依頼人がダンジョン探索を持ちかけるなら、その依頼を受けるのが「最も面白い」のかも知れませんし、依頼内容によっては断るのが「最も面白い」のかも知れません。どのような動機付けをすべきか、プレイヤーは十分な判断材料を集めなくてはならず、ゲームマスターはそれを判断できるように情報を提供しなくてはなりません。

その後も、ゲームマスターがうまく誘導し、プレイヤーはうまく誘導されることで、「最も面白い」ゲームプレイが出来上がっていきます。ダンジョン内では進める道が限られるため、誘導は容易です。行き先が限定される分、行ける場所をすべて廻ることは(そうすべきでないという情報が無い限り)必須で、さもなくば情報を取り逃す恐れがあります。多くの「管理されたダンジョン」は一度の探索に合わせて調整してあるため、途中でダンジョンから出ようとしない方が無難でしょう。

探索の終わりには、「最も面白い」とされる結末、概して「ハッピーエンド」が待っています。ゲームシステムによっては「バッドエンド」が「最も面白い」と見なされている場合もあります。誘導が適切に行われ、余計なことで手間取っていなければ、予定通りの時間でそれに至っている筈です。プレイヤーにとっては、ダンジョン探索が時間通りに終了することが、「最も面白い」ゲームプレイを実現した証左となるのです。

なお、「最も面白い」展開が複数用意され、それらが多様であれば、シナリオの「自由度が高い」ことになります。プレイヤーが何をしても、ゲームマスターの誘導によって「最も面白い」展開に戻せるなら、それも「自由度が高い」と評されます。ただしこれらは卓越した「管理」によるものであって、「自由」ではありません。