『Call of Cthulhu RPG』第7版(CoC7)のルールシステム、いよいよ戦闘に関わるルールについて説明してまいります。特に今回紹介する「格闘戦」(Melee Combat)は、旧版から最も変わった箇所であり、私にとってはCoC7で最も面白くなった部分です。
以下、「射撃」「逃げる」「呪文を唱える」などは省き、「格闘戦」に関わる行為に絞って、判定の手順を示します。各「戦闘ラウンド」(Combat round)において、次のような手順で「対抗判定」が行われます。
- DEXの大きい者から順に「攻撃」する。DEXが同じなら、技能値の高い者が先となる。
- 攻撃側は、「ダメージ」を与えるか、他の「格闘効果」を与えるかを決めて、判定する。
- 防御側は、「回避」するか、(ダメージや格闘効果で)「反撃」するかを決めて、判定する。
- 対抗判定で勝った側が、望む結果を得て、その描写を行う。同じなら防御方法で決まる。
- 攻撃(または反撃)が「ダメージ」を与えたなら、その値を算出して「耐久力」を減らす。
「攻撃」「回避」「反撃」では、「無理押し判定」はできません。
「回避」や「反撃」の具体的な描写は、それを成功させた者に任されます。同じ「回避」でも、攻撃を弾き飛ばす、軽やかに受け流す、紙一重で避ける、など様々です。その後の「反撃」も好むように描写されるでしょう。
「格闘戦」で誰もが使用できる技能は、「格闘(喧嘩)」(Fighting (Brawl)、基本成功率25%)です。この技能で、殴る蹴るをはじめ、ナイフや棍棒なども使えます。プレイヤー用キャラクター(PC)に本格的な武術を使わせたければ、「格闘(空手)」「格闘(剣術)」「格闘(セガール)」等の技能を取得します。サプリメント『Cthulhu through the Ages』では、古代ローマ帝国や中世ヨーロッパのために「格闘(盾)」技能も追加されています。盾のルールは面白いですよ。
「攻撃」や「反撃」で相手に与える「ダメージ」(Damage)以外の効果は、すべて「格闘効果」(Fighting Maneuver)とされます。羽交い絞めにして捕まえる、足払いで転ばせる、突き飛ばして壁にぶつける、窓や崖から突き落とす、武器を落とさせる、持ち物を奪い取るなど、内容はプレイヤーやゲームマスターの発想次第です。ただし、自分より相手の「ビルド」が1高ければペナルティダイス1を受け、3以上大きい相手には通用しません。
防御側が「回避」(Dodge)する場合は、「回避」技能で判定します。成功度が同じなら、防御側が勝ちます。「回避」できる回数に制限はありませんが、2回目以降は攻撃側にボーナスダイス1が与えられます。
防御側が「反撃」(Fight Back)する場合は、任意の「格闘」(Fighting)技能で判定します。成功度が同じなら、攻撃側が勝ちます。「反撃」できる回数に制限はありませんが、2回目以降は攻撃側にボーナスダイス1が与えられます。
なお、動物や神話生物が「攻撃」を受けた時は、基本的に「反撃」します。PCたちが「攻撃」する限り、敵は何度でも「反撃」できますから、実はPCにとって恐ろしいルールです。
さて、「ダメージ」については次回説明するとして、ここで私なりの考察を少し述べます。
旧版CoCでは、「回避」を「攻撃」と同時に行えませんでした。その理由を私は、「回避」が「逃げ延び、生き延び、日記を書く」ための技能であったため、と解釈しています。敵の攻撃をかわしつつ相手を倒すゲームではない、攻撃するなら自分の生命を犠牲にしなくてはならない、という設計思想(Design Concept)だったのでしょう。
然るにCoC7では、(日本製の派生ルールを除く)BRP版CoC史上はじめて、「攻撃」と「回避」とを同時にできるようになりました。しかも、回数制限無しで。この変化をどのように捉えるか、まだ私も考察中ですが、PCが強くなったわけではありません。むしろ「反撃」のせいで、下手に攻撃すれば一瞬で全滅しかねません。
強大な敵がますます危険かつ恐ろしくなった反面、人間に近い敵となら「格闘戦」は派手で面白くなるだろう、と私は期待しています。「マーシャルアーツ」技能(成功するとダメージ倍加)は廃止されましたが、「格闘効果」が明確に組み込まれたため、活劇的な描写を扱いやすくなっています。実際のゲームプレイにどのように影響するか、早く試したいところです。
また「格闘戦」が面白くなったことで、「現代日本」を舞台にしやすくなりました。旧版CoCでは銃が(拳よりは)頼りになりましたが、現代日本では法的に、また心理的に、銃の使用が強く自粛されました。拳や刀剣などが頼りになれば、銃が無くても構いませんから。また、様々な武術の特徴的攻防を描写し易くなっていますし。
若干強化された刀剣類のダメージなどは、その効果や治癒までも含めて、次回紹介。射撃戦などについても、その後で簡単に触れます。