『Call of Cthulhu RPG』第7版(CoC7)のルールシステム、今回は「対抗判定」や「格闘戦」、「追撃戦」の判定例を、またもや私立探偵のデータを用いて示します。以下、前回判定例の続きから。
私立探偵は事務所を出て、家路に就いた。しばらく歩いた後、何か違和感を感じた。
「違和感を感じた」のはゲームマスターが「目星」(Spot hidden)判定を促したからです。失敗して何にも気づかなくとも、それは残るでしょう。
尾行者が非プレイヤー用キャラクター(NPC)なら、NPCの「隠密」(Stealth)技能を難度として、「目星」技能値による行為判定を行います。「隠密」が49未満なら「並難度」、50以上なら「上難度」です。
尾行者が他の探索者(プレイヤー用キャラクター、PC)なら、「目星」対「隠密」の対抗判定を行います。「無理押し判定」も可能です。尾行者がNPCでも、重要かつ劇的な局面とゲームマスターが判断すれば、対抗判定を求める場合もあります。「目星」と「隠密」とが同じ成功度なら、判定前の「尾行者が見つかっていない」状態が維持される、と私なら解釈します。
- 「目星」対「隠密」の対抗判定の結果
- 「目星」の成功度が上:探偵は尾行者を見つける。
- 両者の成功度が同じ:探偵は尾行者を見つけられない。
- 「隠密」の成功度が上:探偵は尾行者を見つけられない。
「目星」に失敗して「無理押し判定」を行い、またもや相手を上回ることができなければ「大失敗」です。たまたま出てきた猫に安心して無防備となり、尾行者の「不意打ち」が自動的に成功する、あるいは「修正ダイス」1が与えられるかもしれません。
人気のない路地に差し掛かった途端、顔を隠した尾行者が私立探偵に近づいた。黒づくめの服の中で、ナイフの刃が浮いているように見える。数瞬の後、尾行者はナイフで斬りかかってきた。
探偵のDEXは73、尾行者のDEXは50とします。第1戦闘ラウンドのDEX73で探偵は、不意を打たれて驚いたのか、様子を見たか、何も行動しません。
DEX50で尾行者は、「小型ナイフでダメージを与える」と宣言し、「格闘戦(喧嘩)」(Fighting(Brawl))技能で判定します。探偵は「回避」を宣言し、「回避」(Dodge)技能で判定します。防御側が回避するなら、防御側有利となります。戦闘では「無理押し判定」できません。
- 「格闘戦」対「回避」の対抗判定の結果
- 「格闘戦」の成功度が上:尾行者は探偵にダメージを与えた。
- 両者の成功度が同じ:探偵は尾行者の攻撃を避けた。
- 「回避」の成功度が上:探偵は尾行者の攻撃を避けた。
攻撃側が「大成功」でダメージを与えたなら、ナイフは「貫通ダメージ」を与えます。ダメージボーナス(db)無しとしても、小型ナイフ「1D4」が「1D4+4」(5~8)となります。探偵の「耐久力」は12ですから、一度斬られても即死はありませんが、一撃で6以上のダメージを受ければ「重傷」となります。「貫通」は滅多になくとも恐怖です。
そこで第2戦闘ラウンドのDEX73で探偵は、「格闘効果」(Fighting Maneuver)として「尾行者の手からナイフを叩き落とす」と宣言し、「格闘戦(喧嘩)」技能で判定します。尾行者は「反撃」で「ダメージを与える」とし、「格闘戦(喧嘩)」技能で判定します。防御側が反撃するなら、攻撃側有利となります。
- 「格闘戦」対「格闘戦」の対抗判定の結果
- 探偵の「格闘戦」成功度が上:探偵は尾行者のナイフを叩き落とした。
- 両者の成功度が同じ:探偵は尾行者のナイフを叩き落とした。
- 尾行者の「格闘戦」成功度が上:尾行者は探偵にダメージを与える。
DEX50で尾行者は、「足払いで探偵を転ばせる」という「格闘効果」を狙い、「格闘戦(喧嘩)」技能で判定します。探偵は「足払いを避けての足払いで尾行者を転ばせる」という「反撃」を、「格闘戦(喧嘩)」技能で判定します。探偵の「ビルド」(Build)は1、尾行者(db無し)は0です。尾行者は自分よりビルドが1高い相手に「格闘効果」を与えようとするので、ペナルティダイス1を被ります。
- 「格闘戦」対「格闘戦」の対抗判定の結果
- 探偵の「格闘戦」成功度が上:探偵の足払いが尾行者を転ばせた。
- 両者の成功度が同じ:尾行者の足払いが探偵を転ばせた。
- 尾行者の「格闘戦」成功度が上:尾行者の足払いが探偵を転ばせた。
さて。
格闘の後、探偵は身を翻して走り出した。尾行者は、迷わず追いかける。
ここで両者とも、CON判定を行います。探偵の「移動率」(Movement rate)は8ですが判定に「失敗」、バランスを崩したか「移動率」は7となります。尾行者の「移動率」は8、「並成功」で8のまま。追う側の「移動率」が追われる側の「移動率」以上なので、「追撃戦」(Chase)が成立します。
探偵は尾行者より2マス先に位置し、「移動率」7の探偵は「1運動」(Movement action)、8の尾行者は「2運動」を得ます。ただ走るだけなら探偵は1マス、尾行者は2マス前進なので、すぐに追いつかれてしまいます。それでは面白くないとゲームマスター(GM)は、探偵の次のマスを泥ですべりやすくなっている「障害」(Hazard)としました。DEX判定に失敗すると転倒するのです。
第1追撃ラウンドはDEX順で、まずは探偵。1マス前進して「障害」に侵入、DEX判定に難なく成功しました。尾行者は2マス前進、探偵のひとつ後のマスまで迫りました。
第2追撃ラウンドも、探偵は1マス前進。尾行者は1運動で1マス前進し「障害」に侵入、もう1運動をDEX判定のボーナスダイス1としました。その甲斐あって判定に成功。距離は同じです。
GMは最後のチャンスとして、探偵の次のマスにフェンスを置き、「登攀」(Climb)に成功しないと前進できない「障壁」(Barrier)としました。「探偵」の「登攀」技能は20%。1運動しかありませんから、移動してすぐには、これをボーナスダイスにできません。判定に失敗すれば、尾行者に追いつかれてしまいます。
探偵は、フェンスに飛びつき、登り始めた。すぐ後ろから尾行者が近づいてくる音が聞こえる。尾行者が飛び道具を持っていたら、と背筋が寒くなる。フェンスから落ちてしまえば、戦うしかない。そうなったら...投げつけるのに手頃な石は落ちていないだろうか?
フェンスから降り、石を拾って投げるなら、今度は「射撃戦」が始まります。が、長くなりましたので、この続きは省略。
次回はルール紹介に戻り、「狂気」に関する変更点について紹介します。