「GM二人制についての一考察」で述べた一案「舞台担当GM」の一例を、『クトゥルフ神話TRPG』(CoC)を用いて、示します。名付けて「アーカムマスター」。
H.P.ラブクラフト等が創作したアメリカ合衆国マサチューセッツ州の架空の町「アーカム」(Arkham)は、卓上RPG用の舞台設定として数点刊行されています。アーカムにある「ミスカトニック大学」についても先日、和訳出版されました。以下、日米の出版状況。
- 英語版『H.P. Lovecraft's Arkham』(Chaosium) ... PDF版のみ15.92ドルで販売中
- その日本語版『H.P.ラヴクラフト アーカム』(新紀元社) ... 現在は売切
- 英語版『Arkham Now』(Chaosium) ... 現代用。書籍版、PDF版共に販売中
- 英語版『Miskatonic University』(Chaosium) ... 書籍版、PDF版共に販売中
- 日本語版『ミスカトニック大学』(エンターブレイン)...平成25年7月に刊行
インスマスやダニッチなどを含めた、いわゆる「ラヴクラフト・カントリー」(Lovecraft Country)の中でアーカムこそは、プレイヤー用キャラクター「探索者」(Investigator)の本拠地に相応しい町です。小説にも登場する人物や場所、その後日談なども記されて、ゲームの舞台として刺激に満ちた設定となっています。
とはいえ、シナリオと直接関係のない設定が豊富にあっても、ゲームマスター(キーパー)一人ではそこまで扱いきれません。シナリオ独自の人物や事件を回すだけで精いっぱい、プレイヤーたちにアーカムを楽しませる余裕など無く、それなら世界設定などいらない!と叫びたくなったなら?
それなら、舞台は「舞台担当GM」に任せて、「事件担当GM」に集中すればよいのです。任された「舞台担当GM」は、次のように遊びます。
- アーカムを受け持つ「舞台担当GM」即ち「アーカムマスター」は、『H.P.ラヴクラフト アーカム』の設定を読み込んでおき、ゲームプレイの際には本を忘れないようにします。
- あらかじめ(プレイヤーが探索者を作成している時にでも)「事件担当GM」に、シナリオで重要な役割を果たすアーカムの住人や場所の有無、あるなら誰/どこかを確認しておきます。
- ゲームプレイが始まったなら、進行は基本的に「事件担当GM」に任せます。プレイヤーの行先がシナリオと無関係なら、合図を受けて「舞台担当GM」が対応します。設定通りに、シナリオ本編を邪魔しないよう簡潔に済ませましょう。
- 当初使わない筈だった人物や場所を、「事件担当GM」が急遽使うことを思いつくかも知れません。その場合は、速やかに交替します。「事件担当GM」が設定をどう活かすか、楽しんでください。
- プレイヤーたちは、「舞台担当GM」(が操る人物)を味方につけようと画策するかも知れません。設定上妥当と判断したなら、提案を受けましょう。「事件担当GM」と話し合って決めても構いません。
- 「舞台担当GM」は、「事件担当GM」に対してもプレイヤーたちに対しても中立です。ただし、そのいずれに対しても、シナリオ進行に協力しなくてはなりません。「舞台」は、「事件」とその解決のためにあるのですから。
以上は、市販のサプリメントを利用した例示。独自設定については、また少し要領が違ってきます。その辺も、おいおい書きたいところです。
上記のような「舞台担当GM」の心構えについては、「事件担当GM」のそれと一緒に、改めてまとめる予定です。