先の論考の補足として、『ソードワールド2.0』(SW2.0)の経験点ルールについて紹介しておきます。特に、『アリアンロッドRPG2E』(AR2E)の成長点ルールは「ゴールデンルール」と密接に結びついていますが、SW2.0の経験点ルールはそうでない、ということを。
SW2.0におけるキャラクターの成長は、厳密には「経験点」「能力値の成長」「名誉点」の三種に分かれます。それらの獲得は、次のようになっています。(SW2.0ルールブック1、p.88~91他)
- シナリオ終了時に「シナリオの目的」を達成できていれば1,000経験点、未達成なら500経験点
- シナリオ終了時までに倒した魔物の合計レベル×10経験点
- 行為判定で自動失敗する度に、即座に50経験点
- 1セッション(1シナリオ)終了時に、いずれかの能力値+1
- シナリオ内で手に入れた「剣のかけら」を1つ消費すると、1D6名誉点
経験点は技能レベルの増加に、名誉点は別のことに使うのですが、その辺は重要でないので省略。あと、1セッションと1シナリオとが一致しなかった場合どうするか、とかも、どうでもいいや。
このような「経験点」などのルールには、AR2Eの「成長点ルール」と比較して、次のような特徴があります。
- 経験点は、プレイヤーではなく、キャラクターに与えられる。キャラクターが途中で死ねば得られない。
- 経験点は、ゲームマスターには与えられない。
- 経験点は、そのプレイヤーの、そのシナリオに参加したキャラクターにしか使えない。
うん、ごく普通というか伝統的な経験点ルールですね。更に言うと、このような経験点はプレイヤーが、
- PCが死んだ後までセッションに参加しても、しなくても、
- 良いロールプレイをしても、しなくても、
- 他のプレイヤーを助けるような発言や行動をしても、しなくても、
- セッションの進行を助けても、助けなくても、
- 場所の手配やスケジュール調整などを行っても、行わなくても、
貰える点数が増えたり減ったりしません。例えばSW2.0のプレイヤーが他のプレイヤーを助けたなら、それは「経験点を多く貰えるから」ではなく「助けたいから」助けたのです、多分。助けないのは、「経験点が多く貰えないから」かも知れませんが。
さて、「ゴールデンルール」や「最初に憶える大切なルール」のような「遊び方」は、遊び手が取捨選択できるものです。例えば、AR2Eを「最初に憶える大切なルール」で遊ぶ、という選択も可能です。AR2Eの成長点ルールは、「最初に憶える大切なルール」で遊ぶ場合でも有効に働く筈です。
逆に、SW2.0を「ゴールデンルール」で遊ぶには、「経験点ルール」を見直す必要があります。AR2Eの「成長点ルール」にはプレイヤーを管理(Control)する機能がありますが、SW2.0の「経験点ルール」にはそれが無いためです。通例「経験点ルール」はルールシステムの一部ですが、「成長点ルール」はむしろ「ゴールデンルール」の一部、と言って良いでしょう。
とはいえ、キャラクターの成長に関わるルールを見直すことは、多くのゲームシステムでは困難です。レベル制など、成長を重視するゲームでは、慎重にデザインされています。成長を重視しない、例えばBRPやトラベラーなどでは、ほとんど手の加えようがありません。「ゴールデンルール」は、FEAR社製RPGだけに用いるのが無難、ということかも知れません。