ゴールデンルールという遊び方

卓上RPGには、様々な「遊び方」があります。「遊び方」とは、ゲームプレイにおいてルールシステムや世界設定をどう使って遊ぶか、という方法のことです。「メタルール」と言ってもよいのですが、下位の「ルールシステム」と混同されそうなので、私は「遊び方」と呼んでいます。

これら「遊び方」のひとつを、FEAR社は「ゴールデンルール」(黄金律)と名付け、自社製RPGシステムにしばしば採用しています。このカテゴリーでは、この「ゴールデンルール」がどのような「遊び方」なのか、その中に見出される「FEARらしさ」とは何か、などについて考えてまいります。

まず、考察の対象となる「ゴールデンルール」全文(一部省略)を引用します。『アリアンロッドRPG 2E』(以下、AR2E)の『ルールブック (1)』(富士見書房、2011年)p.18~21所収のもの、ただし文中の太字は筆者(=鏡)によります。

ゴールデンルール
『AR2E』は、ゲームの参加者全員が協力してひとつの物語を創る。そして、その物語が生まれる過程、そして物語そのものを楽しむゲームでもある。これらを満たすため、そして円滑にゲームを運用するために、本書ではもっともルールの基本となるゴールデンルールを規定する。
ゴールデンルールは、本書および今後発表される『AR2E』に関連するあらゆるルール、およびデータなどに優先する
GMの権限
『AR2E』のセッションを遊ぶGMに、次の権限と能力を与える。ただし、これらの権限や能力を行使するにあたって、GMは可能な限り正しいルールで遊ぶこと。加えてすべてのセッションの参加者(GMを含む)に対して、公平なルールの適用を心がけること。
ルールの裁定
セッション中に演出されている空間は、参加者の想像力とルールによって仮想された、もうひとつの現実である。本書では可能な限り"ゲーム内の現実"をシミュレートするためのルールを掲載しているが、それでもルールに記述されていない事態は発生する。
GMは、そのような事態が発生した際に、あるいはルールの運用に迷う場合に、どのように裁定するかを決定するかを決定する最終的な権利を持つ。それにともない、GMはルールを作成、および変更、さらには存在するルールを適用しなくともよい
結果の棄却、および決定
GMはみずからが確認していない、あるいは許可していないプレイヤーの判定やダイスロールの結果を棄却し、プレイヤーにダイスロールを行わせることができる。
また、GMはみずからが行なう(たとえばNPCの)判定やダイスロールの結果を、ダイスを振らずに自由に決定できる
ルール運用を間違った場合
もし、GM、あるいはプレイヤーがルールの適用を間違った場合、速やかに訂正し、以降は正しいルールにしたがって処理すること。
この時、すでにルールの処理が終わり、結果が出ていることについては、基本的に時間を巻き戻すなどして、結果を変更してはならない(これはスポーツで一度決定した結果がそうそう覆らないのと同じだ)。このような"巻き戻し"を始めると、際限がなくなる可能性がある。その結果、GMの持つルールの裁定権は有名無実となってしまう。そうなってしまったら、個々の参加者がルールを勝手に解釈し、結果を裁定するようになるかもしれない。これを防ぐため、時間の"巻き戻し"を行ってはならない。
なお、間違ったルールの適用がされる前に、そのことをプレイヤーが指摘するのは間違った行為ではない。GMはただちにルールを確認し、正しいルールを適用すること。ただし、「ルールの裁定」に基づいている場合はこの限りではない。また、プレイヤーもGMの裁定に異を唱え、ゲームの進行を停滞させてはならない
セッションの目的
TRPGをプレイすること、あるいはそのために集まることをセッションという。
セッションは参加者全員が充実した楽しい時間を過ごすことを目的としている。そして、最終的なセッションの目的とは、参加者全員が"また『AR2E』を遊ぼう"と思い、そのように行動することである。
最初の説明でも書いたが、TRPGは参加者全員が"楽しい"と思えば勝利である。では、参加者全員が"楽しい"と思える――つまり、勝利する条件とはなんだろうか。
この条件について、『AR2E』では、もう少し具体的に定義してみたい。なぜなら、勝利することを実現するためにどのように行動するべきかを、参加者それぞれに考えてもらった方がセッションが面白くなる――と我々は考えているからである。
それでは、『AR2E』の勝利について定義しよう。
とはいっても、それほど難しいことではない。参加者全員ができるだけ多くの成長点を得る。それが『AR2E』における勝利である。
そして、『AR2E』はそのように行動したセッションが面白く、そして楽しいものになるようにデザインされている。成長点を得るための項目に「セッションに最後まで参加した」「他のプレイヤーを助けるような発言や行動を行った」「セッションの進行を助けた」などがあるのもそのためだ。
全参加者が協力したり、助け合ったりすることで多くの成長点を得る――これを『AR2E』のセッションの目的として、プレイして欲しい。
『ルールブック(1)』と『ルールブック(2)』
(省略)
用語早見表
(省略)

以上です。

「ゴールデンルール」の萌芽は『トーキョーNOVA The Revolution』(新紀元社、1998年)p.122に既に見受けられ、命名されて以後も度々記述が変わってきました。上記「ゴールデンルール」は、『ダブルクロスThe 3rd Edition』(富士見書房、2009年)とほぼ同じで、完成度が一層高まったものと言えましょう。

さて、上記「ゴールデンルール」のような「遊び方」には、次のような特徴が見出されます。

  1. 「ゴールデンルール」は、ある特異なヒエラルキーを成立させる。
  2. そのヒエラルキーは、極端な「ゲームマスター主導」を指向する。
  3. 「ゲームマスター主導」とすべく、成長点ルールを活用している。

これら各特徴について、次回論考から述べてまいります。更には、「ゴールデンルール」がどのようなゲームプレイに向いているのか、また向いていないのか、についても。

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