前回の論考では、「ゲームマスター主導」の遊び方について述べました。それと相対する遊び方として、「プレイヤー主導」というものがありますので、こちらも紹介しておきます。
まず、「プレイヤー主導」におけるヒエラルキーは、例えば次のようになります。
- ルールシステム
- プレイヤー
- ゲームマスター
「プレイヤー主導」とは、プレイヤーがやりたいことにゲームマスターが対処してゲームプレイを成立させる遊び方のことです。ゲームマスターは、プレイヤーがキャラクターを使って遊ぶための「場」や「材料」を準備し、それを「シナリオ」と呼びます。プレイヤーは基本的には「何をしても良い」ので、「シナリオ」を参考にして「何をしたいか」(キャラクターに何をさせたいか)を考え、「何をするか」(キャラクターに何をさせるか)を決めます。もちろん、ルールシステムはプレイヤーよりも上位にありますから、それを曲げることは許されませんが。
「シナリオ」は、ひとつのダンジョンのみであったり、複雑な人間関係を伴う登場人物群であったり、あるいは、放っておけば悲劇に至る状況であったり、有為転変を秘めた日常であったり、と様々です。内容は何であれ、プレイヤーがしたいようにするのが最も面白い、という認識を共有します。ちなみに、ゲームマスターも他の登場人物(NPC)に、したいようにさせます。
以下、「何をしても良い」ことの例を示します。「シナリオ」作成時に、プレイヤーが「するかも知れない」行動が幾つか想定されますが、プレイヤーの発想次第で想定外の行動もあるでしょう。
- プレイヤー用キャラクターは、どのような人物であっても良い
- キャラクターは、どのように事件や登場人物に関わっても良い
- どのような情報を、どのように探るかは、プレイヤーが決める
- どの相手を敵とし、いつどこで戦うかは、プレイヤーが決める
- ある戦いで、勝つか、負けるか、逃げるかは、プレイヤー次第
- ある謎を、いつどこで解くか、解かないかは、プレイヤー次第
- ある分かれ道などを、どちらに進むかは、プレイヤーが決める
- いつどこでクライマックスを迎えるか迎えないかは、成り行き
- 事件や登場人物と別れるか別れないかは、プレイヤーが決める
- プレイヤーかキャラクターが成長点を何点得るかは、成り行き
「何をするか」(キャラクターに何をさせるか)はプレイヤーが決め、それが「できた」か「できなかった」かはルールシステムが決め、それによって他の登場人物(NPC)や周囲の環境がどうなったかはゲームマスターが決めるのです。選ばれるべき正解や選択肢は無く、キャラクターに何をさせるかはそのプレイヤーの自由です。
余談ですが、ある人が何をするかを自分で決められることを「自由」と言います。自由でない、とは、何をするかを自分では決められず、他人に決められること、誰かに「管理」されることです。例えば奴隷は、自分がすべき行動を自分で決められず、主人(マスター)に決められるので、「自由」ではなく、主人に「管理」されていることになります。「自由」には「責任」が伴うので「管理」された方が楽、というのも確かですが。
さて、プレイヤーは「何をしても良い」のですから、その「シナリオ」で「してはいけない」ことなどありません。ルールシステムや世界設定はゲームデザイナーが、「シナリオ」はゲームマスターが用意してくれますが、それらを用いてどのように楽しむか、はプレイヤーに任されます。プレイヤーは能動的に「楽しむ参加者」であり、ゲームマスターは受動的に「楽しんでもらう参加者」となります。両者の関係は、スポーツやグルメなど様々なゲームイベントの企画者と参加者との関係、あるいは、各種ゲームのデザイナーとユーザーとの関係に似ています。(もちろん、いわゆる「やらせ」のような、台本のあるイベントは除きます。)
「プレイヤー主導」は、仲間内でのゲームプレイ、特にキャンペーンプレイに適しています。最初のシナリオはしばしば、プレイヤーたちがどういうキャラクターを作ったか、に基づいて作られます。次回のシナリオは、前回プレイヤーが何をしたか、そしてそれからどうするか、を参考にして作られます。プレイヤーは世界設定資料なども読まなくてはならないため、負担が増えます。その分ゲームマスターは楽ができます。「楽しい」のはどちらか、はともかく。
なお、ゴールデンルールとその前身のような「極端なゲームマスター主導」があるように、「極端なプレイヤー主導」もあります。プレイヤーはルールシステムを変えてよい、ゲームマスターはプレイヤーに任せる、というような。このような「遊び方」は、現実には困難です。しばしばプレイヤー間の諍いを招きますので。私の経験では、プレイヤーの一人(最年長者)が後付のキャラクター設定で情報を得ようとした事例くらいです。
まとめますと、ヒエラルキーによって「遊び方」は四種類に分類できる、ということです。次の通り。
- 極端なゲームマスター主導 (ゲームマスター>ルールシステム>プレイヤー)
- ゲームマスター主導 (ルールシステム>ゲームマスター>プレイヤー)
- プレイヤー主導 (ルールシステム>プレイヤー>ゲームマスター)
- 極端なプレイヤー主導 (プレイヤー>ルールシステム>ゲームマスター)
私は一応すべて体験しましたが、「やれ」とは言いませんよ。好みとか、向き不向きというものもありますから。けれど、知っておくだけでも損はないでしょう。あるものの良さはそのものの悪さを知ることで分かり、何に向いているかは何に向いていないかを知ることで理解できるのですから。
次回は「ゴールデンルール」に戻り、それと「成長点ルール」との関係について考えます。