「キャラクターの中のメタ」の3番目は、「リアルなキャラ」。そのゲームの舞台世界が本当にあったなら、きっとそこにいるであろう人物を、キャラクターとする場合について。
「リアルなキャラ」への希求は、おそらくは「駒としてのキャラクター」に対する反省から生まれました。空想の世界で遊ぶにせよ、単なる「駒」では飽き足らない。その世界なりのリアリティ(本当らしさ)を備えた人物、その世界に本当に生きているような人物を、己の分身としたい。このような想いは、良質な小説や映画から得られるような喜びを卓上RPGに求めた者にとっては、自然なことだったでしょう。
「リアルなキャラ」においては、何よりも「リアリティ」が優先されます。そのようなPCの「階層構造」は次の通り。
- リアリティ : PCは、ゲーム世界においてリアルな(本当っぽい)人物として創作され、リアルな行動しか取らない。
- その設定 : 人格や背景は、PCがゲーム世界においてリアルであるよう設定され、描写される。
- その能力 : クラスや技能は、PCのリアルな設定に符合するよう選択され、リアルな行動において行使される。
プレイヤーは、PCがそのゲーム世界においてリアルであることを、他の何よりも優先させます。目前で何か事件が起ったとして、それに関わるのがリアルと思われればPCは関わりますが、関わらない方がリアルなら関わりません。何がリアル(本当っぽい)かは、その担当プレイヤーが各々自分で決めることですから、皆がバラバラの行動を始める場合もありえます。その顛末が本当っぽいなら、ゲームっぽくならなくても仕方ありません。
ゲーム世界の住人たちに職業や社会身分として認識されるような「冒険者」は、上記2「その設定」に含まれます。このような冒険者は、冒険に挑むのが不自然なら、冒険しません。ここに、「冒険しない冒険者」が生まれます。
PCが「リアルなキャラ」なら、NPCもまた「リアルなキャラ」であることが求められます。NPCのリアルな反応によって、プレイヤーはその世界のリアリティを味わい、満足を深めることができるのですから。もっとも、どのような行動をリアルと感じるかは、人によって差異がありますが。
あらゆるPCの「リアリティ」に対応できるようなシナリオを組み、かつ運用することは、なかなか困難です。ゲームマスターがリアルと思って用意した展開も、プレイヤーがそう思わなければ止まってしまいます。かといって、導入から結末に至るまでに多様な選択肢を緻密に配置しておくには、大変な労力を要します。さもなくば、状況だけを提示してプレイヤーに任せる、プレイヤーに語らせたPCの物語を互いに絡ませていく、といった難度の高いマスタリングで切り抜けねばなりません。
難度が高い分、完成した時の感動も大きいのが、リアリティ。それを目指して、PCとNPCとに駆け引きを交わさせていく。これが、「リアルなキャラ」を「メタゲーム」としたゲームプレイです。