「初心者専用世界設定」を考える前に、今回は「世界設定」について私の考えをまとめます。
プレイヤーとゲームマスターが、ゲーム世界とキャラクターとを本当に存在するかのように想い描くには、それらの「リアリティ」(本当らしさ)を掴んでおく必要があります。そのための参考資料となるのが「世界設定」であり、ゲーム世界の地図や歴史、慣習や法律など様々な手掛かりを提供します。例えば次のような事柄を「世界設定」の中に見出しつつ、「リアリティ」を掴み取っていきます。
- When? (時間)
- 季節や時間帯の情景。「冬の早朝」「春の昼時」「秋の夕暮れ」など。
- 時間感覚。「三十分間」待つことや「三日間」の旅をすることが与える印象など。
- Where? (空間)
- 近隣の情景。どのような施設や店舗があるか、道の幅や天井の高さはどれくらいか、など。
- 距離感覚。「100m」先や「100km」離れていることが与える印象など。交通手段とも関連する。
- Who? (人物)
- 名も無き人々。ある時間のある場所に、店員や通行人など、どのような人物がいるか。
- 社交感覚。ある性別、年齢、外見の人物に対して、どのように接するべきか、など。
- What? (物品)
- 当たり前の物品。ある時間のある場所に、商品、家具、日用品など、どのような物品があるか。
- 流通経路。ある物品が、どこで作られ、どのように運ばれ、どこで手に入るか、など。
- How? (活用)
- 様々な仕事。人々が物品を用いて、どのようなサービスを、何を代価に提供するか、など。
- 仕事の印象。飲酒や風俗など、様々なサービスが、法律上または社会通念上、周囲に与える印象など。
- Why? (動機)
- 動機となる思想。欲求や主義、宗教など、どのような動機が人々を積極的に行動させうるか。
- 思想の印象。ある欲求や主義、宗教などが、法律上または社会通念上、周囲に与える印象など。
これらの背景に「リアリティ」を見出す過程で、キャラクターの「日常」を感覚として身につけることができます。どのような場面が日常的か、そこにどのような人物がいて、どのように振る舞うのが自然か。それを裏返せば「非日常」となり、何が不自然かを知ることにもなります。これらに基づいて、キャラクターに何をさせるか、などを決めていくのです。
「世界設定」は、必ずしも暗記すべきものではありません。説明が多くても、内容が親しみ易ければ、「リアリティ」は掴み易くなります。ベテランにも魅力的な「初心者向け」としてデザインするなら、まず我々の現実(現代日本)や史実を基本とし、その背後に現実・史実とは異なる設定を加える、という方法があります。また、有名な原作(映画やマンガなど)に倣うのも良いでしょう。
それに対して「初心者専用世界設定」なら、「リアリティ」の掴み易さだけを追求すれば十分です。映画や小説のように魅力的な異世界を体験したい、そういう特殊な設定を読解する手間は惜しまない、という初心者は、「初心者専用」では無視して構いませんので。
以上の私の考えに則り、「初心者専用世界設定」の例を次回記します。例によって極端なものばかり示すことになるでしょう。