「自由に遊ぶゲームプレイ」のためのシナリオの例を、再び次の題材にて考えてみましょう。
んー。一人は魔王を倒しに山へ出かけ、もう一人は洗濯をしに川へ出かけたら、どうなるのかなぁ。
と言っても、使うところは「魔王が山にいる」だけ。これを「事件」として、このネタひとつからシナリオを作ってみます。まずは思いつくままに、ネタを揃えていきます。
- 事件「魔王が山にいる」
- 人物「魔王」...勇者との戦いで肉体を失い、自分の魂を城に封印した。仮の肉体に魂を収めて守っている。肉体復活の機会を狙っている。
- 人物「村長」...かつて娘を人身御供に差し出したことを悔やんでいる。恐怖から逃れられない村人のために魔王退治を依頼。退治が成功しても失敗しても娘の後を追うつもり。
- 人物「村長の娘」...かつて人身御供に差し出された。城にいて、村の平和を願っている。一生をこのまま終えるつもり。
- 場所「村の広場」...村人たちがいる。
- 場所「村長の家」...村長以外は誰も住んでいない。
- 場所「村から城への道」...魔王の手下と遭遇する可能性がある。
- 場所「魔王の城」...周辺を手下が定期的に巡回している。門には常に門番が2名いる。
- 場所「魔王の城の(各部屋)」...そこにいる者、ある物、起こることを設定。
ネタが一通り揃ったら、各々についてPCの行動の極端な例を三つほど考え、そうした場合に状況がどのように変化するか、NPCがどう反応するか、を想定しておきます。例えば、次の通り。
- 事件「魔王が山にいる」に自ら取り組む...成果はともあれ、勇敢さを称えられる可能性高し。
- 事件「魔王が山にいる」に他の援助を求める...何故かあらゆる勢力から拒否される(魔王の設定を深めるネタになる)。再度判断させる。
- 事件「魔王が山にいる」を無視して去る...シナリオ終了。
- 人物「村長」の依頼を受ける...村長は喜び、村人とも友好的になり、サービスが受けられる。
- 人物「村長」の依頼を断る...村長は悲しみ、村人の憎まれる。リンチの可能性あり。
- 人物「村長」を襲う...村人や他のNPCとも敵対する。結果がどうであれ村長は絶望する。
- 場所「魔王の城の門」で門番に戦いを挑む...騒ぎを聞きつけ、中から手下が出てきて加わる。
- 場所「魔王の城の門」で門番の気をそらせて入り込む..."忍び歩き"判定に成功すれば、「魔王の城の玄関広間」へ。
- 場所「魔王の城の門」で門番に入れてくれるよう頼む..."言いくるめ"判定に成功すれば、見張りをつけて入れてくれる。
もし「魔王」が玉座の間で戦うだけの相手なら、「場所」の一部扱いで構いません。「村長」なども同じで、「人物」は無しでも大丈夫。色々な「場所」に登場してPCと積極的に絡めたいなら、「人物」の方が適しています。
もし別の事件「邪悪な魔術師が魔王の仕業に見せかけて村を襲った」を追加すれば、「人物」や「場所」も増えます。一部の「人物」を両方の「事件」と関係づけるなどして、総数が多くなり過ぎないよう注意しましょう。
このようにシナリオを作成し、イメージを膨らませたら、後は遊ぶだけです。ゲームマスターは、最初に初期情報を与えた後は、プレイヤーのアクションに対してリアクションを返すに徹します。もっとも「人物」は自分の設定に基づいて、より大胆な行動を仕掛けることもあります。
- プレイヤーB : 洗濯をしに川へ行きます。村の女たちがいない辺りへ。
- ゲームマスター : 村長が「わしも一緒に行きましょう。あの川は何かと物騒ですからな」と言って、ついてきます。自分の洗濯物と、槍を持って(笑)。
- プレイヤーB : (何だ、その笑いは...。さて、どうしたら面白いかな。)
ネタがあるところで遊ぶ方が大抵は「面白い」ので、よほど勘が悪いプレイヤーでなければ、ネタが何もなさそうなところには行かないものです。それでも行くのは、何か企みがあるからかも知れません。何もないことを断った上で、プレイヤーに任せてしまっても良いでしょう。
- プレイヤーB : 洗濯をしに川へ行きます。村の女たちがいない辺りへ。
- ゲームマスター : 取り合えず、川で洗濯をしている間は、特に何も起こりません。
- プレイヤーB : はい。後で適当に登場しますから、プレイヤーAさんの方をどうぞ(笑)。
- プレイヤーA : (何だ、その笑いは...。さて、どうしたら面白いかな。)
逸脱はしないまでも想定外の行動であった場合は、他の想定内容を応用するか、休憩時間などをとって急遽NPCの対応を考えます。想定済みの内容に無理に「誘導」するのではなく、新しい展開を皆で楽しみましょう。
- プレイヤーB : 洗濯をしに川へ行きます。村の女たちがいない辺りへ。
- ゲームマスター : (む、何も考えてないところへ。) え~と、少し休憩しましょう。ははは。
- プレイヤーA&B : (想定外なわけね。) じゃ、飲物でも...(中略)...買ってきました。
- ゲームマスター : お待たせ!再開!
- プレイヤーB : (何を企んだやら、お手並み拝見。) え~と、川へ着いたら洗濯します。
- ゲームマスター : しばし洗濯すると、茂みの中から若い女性が洗濯物を持って現れます。村の女たちと同じような服装をしている。「あら、こんにちわ。私もここで洗濯してもよろしいですか?」
- プレイヤーB : (え~、新キャラ作ったのかな。) 「はぁ、どうぞ。村の方ですか?」
- ゲームマスター : 女性は洗濯しながらかぶりをふって、「いえ、私は山の城から来ました。」
- プレイヤーB : なぬ!「お嬢さん、私は洗濯をしようとして山中で道に迷ってしまったのです。どうか一夜の宿をお借りできませんか?」と口説きます。
- ゲームマスター : じゃ、それ嘘だし、"言いくるめ"判定。
- プレイヤーB : あう、失敗。
- ゲームマスター : 女性は「いいですよ、ついてきてください」といって立ち上がり、山の中へ。
- プレイヤーB : へ、失敗なのに?猛烈に嫌な予感が...まぁそれはそれで面白いか。ついていきます。
- ゲームマスター : 女性は城の門の前に出て、門番がこちらに気づきます。
- プレイヤーA : ははは、登場した方が面白いか?いや、面白そうだから放っておこう。
- プレイヤーB : うひゃあ、お助け。...って、その女性は怖がってます?
- ゲームマスター : いや、平然と門の方に歩いていくよ。門番が、女性の前で叫ぶ。「お帰りなさいませ!魔王様!」
どうなるのかなぁ。あなただったら、どうするのかなぁ?
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