渡辺京二『逝きし世の面影』

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渡辺京二『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)を読了。

幕末~明治に来日した外国人による記録などの中から、過去確かに存在し、そして滅び去った(消え去った)江戸文明を解き明かそうというものです。帯に記された引用を紹介すれば、どのような文明を示そうとしたか、ご理解いただけるでしょう。

子どもへのこんなやさしさ、両親と老人に対するこのような尊重、洗練された趣味と習慣のかくのごとき普及、異邦人に対するかくも丁寧な態度、自分も楽しみひとも楽しませようとする上でのこのような熱心――この国以外のどこにこのようなものが存在するというのか

この文章はイギリスのエドウィン・アーノルド卿(その息子はSF作家らしい)によるものですが、これほど褒め称えるものばかりではないにせよ、当時の日本社会を海外に伝えようとする膨大な文章が、600頁もの本の中に収められています。

そこに浮かび上がる風景は、今の日本とも違う、しかし確かにどこかが繋がっているような、野放図な活気、躍動感に満ちていて、しかも美しい世界です。時には涙が出るほど素晴らしく、それが今の日本でないことに嫉妬を感じるほどですが、あまりに開けっぴろげな風俗には当時の西欧人と同様、私たちも驚愕せざるを得ません。

私にとって興味深かったことは、引用された数多くの目撃証言の中に、ファンタジー小説に見受けられる風景描写との類似を感じたことです。翻訳文であるが故の類似かも知れませんが、あるいは彼ら来訪者にとっての当時の日本は、妖精郷のように映っていたようにも思えました。

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